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Channel: 団塊Jrのプロレスファン列伝
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プロレス研究所~MSGとプロレス その1 マディソン創世記~

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どうも!!流星仮面二世です!!

さぁ、というわけでですね、マディソン・スクエア・ガーデン、MSGでございます。

もう今ですね、こう聞いただけでオールドなプロレスファンからアメリカンプロレスのファン、そして近代のプロレスファンまで、人それぞれ、いろいろなビジョンや思いが頭を過ったことと思います。

でも、そんなマディソン・・・一体いつ生まれ、いつからプロレスは共に歩むようになったのでしょうか!?今回は、あの探偵たちがマディソンの歴史に挑みます。さぁ、一緒に調査を始めましょう!!

ここは茨城の某所にあるプロレス探偵事務所。プロレスを専門にいろいろな依頼に応えていく日本で唯一の探偵事務所だ。そんな事務所に所属する探偵君に令和の最初に来た調査依頼とは・・・

バタン!!

探偵「せ、先輩!?いますか!?大変なんです!!」

先輩「どうしたんだ藪から棒に!?」

探偵「や、藪から棒って・・・今なかなか使い手がいませんよ。いや、そんなことより大変です」

先輩「なにかあったのか!?」

探偵「ここに新しい所長が来ますよ!!新・所長が決まったんです」

先輩「な、なに!?確かにしょ、いや元・所長か・・・ルパンのコスプレで警察から逃げて今度こそブタ箱だからなぁ。何年入るんだっけ?」

探偵「3年です」

先輩「そうか・・・でも新しい所長、決まって結構なことじゃないか。まあ大変って言っても、あの所長のあとだから大概のことには驚けないだろ」

探偵「いえ、それがですね、ちがった意味で驚きなんですよ」

先輩「ちがった意味!?」

探偵「超エリートらしいんですよ」

先輩「!?」

探偵「これを」

先輩「なになに・・・ニューヨーク州生まれの日本人で、ぷ、プリンストン大学社会学部卒!?元・FBI!?じょ、女性!?な、なんだってこんなすごい人が、こんな事務所に!?」

探偵「わかりません。しかし今日、正式に所長になる前に、あいさつをしに来ると・・・」

先輩「今から来るのか!?なんでこんな急に・・・」

コンコン

探偵「来ましたっ」

ガチャ

新・所長(以下・所長)「失礼します」

探偵「こ、こんにちは」

先輩「こんにちは」

所長「こんにちは。今度、こちらの探偵事務所の所長になることになった、アカツカ・フジオ・イグレシアスです。よろしく」

先輩「あ、はじめまして岡田です。よろしくお願いします」

探偵「はじめまして!さ、佐藤です。よろしくお願いします」

所長「・・・」

先輩・探偵「・・・」

所長「・・・冗談は・・・お嫌いかしら?」

先輩・探偵「え!?」

所長「そんな名前なわけ・・・ないでしょ?」

探偵「・・・ああ、あー!!そうですよね、赤塚不二夫とフリオ・イグレシアスを、あれですね、あの、あれですね!!そうですよねー先輩!!(せ、先輩も何か冗談をっ)」

先輩「ああ!?ああ!!あああ!!どどど、どうりで~!!だってこの名前じゃレレレのおじさんが黒い瞳のナタリー歌っちゃう勢いですもんね!!なぁ!?」

探偵「そ、そうですよね、レレレ(ナタリ)~♪って、ね~。ははは・・・」

先輩「ははは・・・はは・・・」

所長「・・・」

先輩・探偵「・・・」

所長「・・・本名はフジコ・アカツカと言います。よろしくね」

先輩「(なんだよ、ほぼ本名だったんじゃねーかっ。どーすんだよ)」

探偵「(そ、そんな、だって名前を知ら・・・)」

所長「・・・」

先輩・探偵「・・・」

所長「レレレのおじさんが、ナターリー?」

探偵「いや!!」

先輩「いえ!!失礼しました!!お言葉が過ぎまして、本当にあの、あの・・・」

所長「・・・」

先輩・探偵「・・・」

所長「フフフ・・・おもしろいわ~」

探偵「おも、ははは・・・」

先輩「はは、ははは・・・」

所長「フフフ・・・聞いていたとおりだわ。仕事だけじゃなく、あなたたちは素晴らしい人間性も持っているわね。楽しくやっていけそうよ」

探偵「それはどうも・・・」

先輩「どうも・・・(聞いてたとおり?)」

所長「それで今日は・・・あなたたちふたりに依頼をさせてもらおうと思うの」

探偵「依頼を!?」

先輩「所長が自らですか!?」

所長「まだ正式な所長ではないから、これは就任前の、いち個人としての依頼よ」

探偵「個人として?でも、一体どんな・・・」

所長「MSGよ」

探偵「ま、マディソン・スクエア・ガーデンを!?」

所長「そう。マディソンとプロレスの歴史を調べて欲しいの。お願いできるかしら!?」

探偵「それは、まあ・・・」

先輩「しかし所長、なぜMSGを?」

所長「私はニューヨークが生まれ故郷だから、知りたかったっていうのもあったの。でもなかなか調べる機会もなくてね・・・でも今後プロレスにも関わることになるし、いい機会だと思って」

探偵「そうなんですか・・・」

先輩「しかし、こいつは大変だぞ」

所長「そうね。プロレス団体やレスラー個人ではなくMSGだから、範囲が広くなると思うけど・・・大丈夫。あなたたちなら調べられるわ」

探偵「はい」

先輩「わかりました。じゃあ、おれはプロレスの方を調べるから、そっちはマディソンの歴史を調べてくれ」

探偵「わかりました」

所長「・・・」

探偵「・・・」

先輩「・・・?」

所長「フフフ・・・レレレのおじさんがナターリーだって。おっかしー」

先輩「・・・」

探偵「いや・・・」

所長「・・・」

先輩・探偵「・・・」

所長「あっはっは」

先輩・探偵「・・・」

こうして新・所長の依頼で、ふたりはMSG調査を始めます。

探偵「う~ん、資料が英語ばかりだし、かなり古いなぁ・・・これは確かに難題だぁ」

先輩「よう、やってるな」

探偵「ああ先輩。これは大変な作業ですよ」

先輩「だろうなぁ。でも、こんなに資料も集まって、たいしたもんじゃないか。しかし、おれらの頃はマジソンって言ってたけど実際はマディソンなんだなぁ」

探偵「そうですね。その辺も踏まえ、まずは歴史の方からいきますね」

先輩「ああ」

探偵「名前のルーツは今から180年前の1839年にまで遡ります。この年、ニューヨークの5番街、マンハッタンですね。この23~24丁目の位置、ここに"マディソン・コテージ"という、どうやら宿屋だったようなんですが、建てられたという記録が残っています。これが歴史上、初めてこの地に"マディソン"の名が出てきたときになります」

先輩「へぇ・・・マディソンって名前の初出しは宿だったってわけかぁ」

探偵「そうですね。そしてその8年後。1847年に同じくマンハッタンにマディソン・スクエア公園というのができます。これが"マディソン・スクエア"という言葉が初めて出てきたときになりますね」

先輩「なるほど。しかし・・・そもそもこの"マディソン"とは、どういう意味なんだ?」

探偵「はい。実は、その名前の由来は1809年から1817年まで、アメリカ合衆国憲法の父と言われた第4代アメリカ合衆国大統領、ジェームス・マディソンから来ているようなんですよ」

ジェームス・マディソン

先輩「大統領の名前!?なるほど。現在でもアメリカの空母には歴代大統領の名前が付いているのがあるし、他にもケネディ宇宙センターというのもある。テキサス州のダラスも、確か第11代副大統領ジョージ・ダラスが由来だったはずだ」

探偵「そうですね、マディソンという名も同じように因んで付けられたんでしょうね。地名や施設に、こういった人名を用いるという・・・これは愛国心が溢れるお国柄ならではですね」

先輩「そうだなぁ。国後島の"日本人とロシア人の友好の家"をムネオハウスと呼ぶのと同じなんだろうね」

探偵「そ、それは突っ込めませんが・・・お話を戻しまして、その27年後。1874年に現在のニューヨーク市マンハッタン区マディソン街51号。ニューヨークライフビル、これはニューヨーク生命保険ビルというそうなんですが、この場所、マディソン・スクエア公園の北側に当時の興行師だったフィニアス・テイラー・バーナムが"モンスター・クラシック&ジオロジカル・ヒッポロドーム"という名称で、会場を設立するんですね」

フィニアス・テイラー・バーナム

のちにマディソンの基盤となることになるモンスター・クラシック&ジオロジカル・ヒッポロドーム

先輩「マディソン・スクエア公園の北側。場所的には向かいというか隣というか、そんな感じの位置だったんだね。しかし、モンスター・クラシック&ジオロジカル・ヒッポロドーム。直訳すると古典的怪物と地質学的な古代の競馬場となるが、これは一体何をするところだったんだろう?」

探偵「これに関しては残念ながら情報がまったく出てきませんでした。ただバーナム氏はテントで行われるサーカスの生みの親にして、世界で最も知名度があったといわれるサーカス団"リングリング(正式名はリングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカス)"を手掛けた伝説的な興行師だったようです」

先輩「リングリング大サーカスは有名だったね。約150年も続いた老舗のサーカス団だったそうだが、しかし残念ながら2017年に閉幕してしまったんだとか」

探偵「はい。他にもバーナム氏はフリークショーとかサイドショーと呼ばれる、日本でいうところの見世物小屋に当たるような興行も行うなど、まさにエンターテイメントのパイオニア的人物のようでしたね(Subculturepedia サブカルチャーの百科事典 フリークショー Freak show 海外の見世物小屋)」

先輩「なるほど・・・資料に2017年に公開された"グレイテスト・ショーマン"という映画があるが、これはこのバーナムの伝記的映画だったというわけか。バーナムは映画になっていたんだなぁ」

探偵「そうです。主演はヒュー・ジャックマンです。ボクはこの映画は見てないんですが、もしかしたらこの会場はサーカスに使われていたのかもしれませんね。映画ではそのあたりにも触れているかもしれないです」

先輩「なるほどなぁ・・・とにかく、まだ会場名に直接マディソンの文字ははなかったが、のちに世界の檜舞台と呼ばれるようになるこの地に、バーナムが最初にエンターテイメントを持ってきて根付かせたというのは何か因果を感じるなぁ」

探偵「そうですね~。で、その後なんですが、このバーナム氏の会場を2年後の1876年に音楽家でオーケストラ指揮者だったパトリック・ギルモアが借り受けます」

パトリック・ギルモア

先輩「借り受けた・・・ということは名義はまだバーナムだったのか」

探偵「そのようです。このあたりの事情も情報がなくて、まったくわからないんですがね。かくして、このとき会場名が"ギルモアズ・ガーデン"に変更されるんですよ。これがのちのマディソン・スクエア・ガーデンの前身、原点となることになるんですね」

先輩「興行師から音楽家に主催が変わったわけか・・・で、内容はどうだったのかな?」

探偵「このギルモアズ・ガーデンは、ギルモア氏の分野であった音楽のコンサートやフラワーショー、美人コンテストなどのイベントが行われていたようです。そして現在でもマディソンで行われているウェストミンスター・ケネルクラブ・ドッグショーの第1回が1877年に行われていますね」

先輩「ウェストミンスター・ケネルクラブ・ドッグショー・・・よく血統書付きとかチャンピオン犬とか聞くけど、このドッグショーは世界のドッグショーの中でもチャンピオン犬しか出場できないハイレベルな、すごい大会らしいね」

探偵「はい。なんでも世界三大ドックショーのひとつで伝統があるショーのようですよ。まあ、このように・・・ギルモアズ・ガーデンはバーナム時代に比べると、利用用途や市民層に多少変化があったようには感じられますね。それで先輩、この時代のプロレス、ここでの記録はどうでしたか?」

先輩「ああ、マディソンの原点でのプロレス・・・調べてみると、驚いたなぁ~。このギルモアズ・ガーデン時代に記録があったよ」

探偵「本当ですか!?」

先輩「ああ。試合は1876年。先ほどの話と重ねれば、ギルモアズ・ガーデンと名前が変更になったその年だ。この年にプロレスリングを大きく発展させたことから後世まで"プロレスの父"と語られるウィリアム・マルドゥーンというレスラーのデビュー戦が行われた記録が残っていたよ」

探偵「ウィリアム・マルドゥーン?」

先輩「そう。ウィリアム・マルドゥーンは1845年、ニューヨーク出身。1861年、16歳のとき北部諸州の軍へ志願し南北戦争へ出征したという記録が残っており、ここでレスリングと出会い、学んだとされている。のち、1876年にニューヨーク市警の職員になり、このとき警察体育連盟を設立。その後、この連盟の所属としてレスリングのプロである、プロレスラーとして活躍していったという。この時代のプロレスの中心人物だ」

ウィリアム・マルドゥーン

探偵「1800年代末のプロレスラーですか・・・先輩、ボクはまったく想像がつかないんですが、この時代のプロレスとは、どのようなものだったのでしょうか?」

先輩「この時代のプロレスは、プロレスと言っても現在のそれとはまったくちがう、競技としての色がとても強いものだった。特に古来からのレスリング色が濃かったようで、調べていくとカラー・アンド・エルボー・スタイルやグレコローマン・スタイル、キャッチ・アズ・キャッチ・キャンという文字が、それこそ目に飛び込んできたよ」

探偵「これは・・・かつてレスリングには、いろいろな種類があったと聞いていましたが、この時代のプロレスを調べていてレスリングの種類がこんなに出てくるということは、プロレスのルーツがレスリングで、その名残りがまだこの時代にはあったということですかね?」

先輩「そういうことなんだろうな。チャンピオンシップ、タイトル名にも、標準的なライトヘビー級、ヘビー級の王座の他に、グレコローマンやアメリカン・キャッチなど、これらスタイルの名前を冠しているものか多くあったからなぁ。それぞれが同じスタイル同士で戦ったり、自身のスタイルでちがうスタイルと戦うという感じも、あったんじゃないかな」

探偵「なるほど。カラー・アンド・エルボーvsグレコローマンとか・・・当時のプロレスはレスリング内における異種格闘技って感じもしないでもないですね」

先輩「ああ~。実際はどうだったのかはわからないが、当時の試合をあれこれ予想したり想像したりすると、ロマンに耽ってしまうよなぁ。で、話を戻して・・・なんだっけかな」

探偵「ウィリアム・マルドゥーンのデビュー戦ですね」

先輩「そうそう。デビュー戦は1876年。相手はフランスのチャンピオンというシーバウド・バウアーという選手だったそうだ」

探偵「シーバウド・バウアーですか・・・」

先輩「バウアーは1873年・・・フランスのパリに、記録としては最も古く残っているマスクマンである"ザ・マスクド・レスラー"の正体だったという伝説が残っているレスラーだが、現在ではもはや夢物語。確認する術はない。ただパリのレスリング・トーナメントには度々出場していたグレコローマン・スタイルの実力者であったのは間違いないようだ」

探偵「それで・・・結果はどうだったんですか?」

先輩「試合の方は内容、試合時間などは不明だが、マルドゥーンが勝利したとある」

探偵「やはり詳細は残ってないんですか・・・」

先輩「ああ。1876年はグラハム・ベルが世界で初めて電話を開発した年。日本でいうと明治9年だ。そのあたりからもわかるように、このマルドゥーンのプロデビュー戦の詳細が明確でない点はいざ仕方ないところだろう。カメラは存在していたが、まだ初期も初期。一般的でなかった時代なので、写真も残念ながら残っていないようだな」

探偵「うーん、少しでも様子がわかるものはないんですかね?」

先輩「それが、イラストがあるんだよ」

探偵「こ、これは!!」

当時の試合のイラスト。左がバウアー、右がマルドゥーン。そして会場と試合の様子が画かれている

中央の画のアップ。トップハット姿の観客が時代を物語る

探偵「これはすごい!!遠くまで、ぎっしりと観客がいるのがわかりますし、ギルモアズ・ガーデンがどんな感じだったのか想像することができますよ」

先輩「それとリングの様子だ。これ見て真っ先に興味を引かれたのは、このレフリーらしき人間だよ。リングにいるのはレスラー以外の人間だと、普通はレフリー1名だけだけど、これはリング上に3名いるんだ」

これはすごい構図だ

探偵「本当だ。様子からして、まちがいなく3名でレフェリングをしていますね」

先輩「ああ。80年代のメキシコとかアメリカでは、タッグの試合じゃレフリーが2名というのはわりとあったんだよ。しかしシングルで3名というのは、これはちょっと見たことないなぁ」

探偵「考えられるとすれば・・・?」

先輩「うん。たとえば現在のレスリングでは、試合ではレフリーの他、リングサイドにマットチェアマンとジャッジがいる、いわゆる三審制ってやつなんだ」

探偵「三審制!?」

先輩「そう。この方式がいつくらいから行われていたのかはわからないが、この時代はプロレスと言ってもレスリング色が濃く残っていた時代。もしかするとこれはレスリングの名残りで、レフリーとマットチェアマンとジャッジがいて、それがすべてリングに上がって行われていたのかもしれない。あるいは逆に・・・」

探偵「レスリングにはそもそもレフリーが3名いた。しかし年月が経つにつれレフリーが1名になり、もう2名は下に降りレフェリングするようになり、やがてその2名がマットチェアマン、ジャッジとなっていったと・・・」

先輩「うん。そしてプロレスは1名になっていったと、そういう流れなのかもしれないな」

探偵「それにしても、かなり厳重に見ているのがわかります。試合におけるルール、規律への厳しさが予想されますね」

先輩「そうだな。これじゃレフリーのブラインドをついての、なんて攻撃もできないなぁ」

探偵「先輩、他にギルモアズ・ガーデンで試合が行われた記録はなかったんですか?」

先輩「ああ、残念ながら・・・ニューヨークでプロレスの試合が行われた記録は他にもあったんだが、施設がギルモアズ・ガーデンとして使用されていたとされる1876年から1878年の間に、はっきりとプロレスが行われたという項が確認できるものは、この試合の他には見当たらなかった」

探偵「そうなんですか・・・でも、もしかすると記録がないだけで、この試合以外にも同会場でプロレス行われていた可能性はありますよね」

先輩「そうだなぁ。まあ、とにかく・・・1876年にギルモアズ・ガーデンになり同年に記録があるこれが、マディソン所縁のプロレスとしては最古と言っていいだろうね」

続きます。


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