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Channel: 団塊Jrのプロレスファン列伝
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プロレス研究所~エルボーについて考えてみよう~

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どうも!流星仮面二世です!!


さぁ~て、久々のプロレス研究所は現在のプロレスの試合ではまず見かけないということがなくなってしまったエルボー合戦での、この“エルボー”にロックオンしてみたいと思います。


実はボク、近年のプロレスにおいて苦手な技や苦手なレスラーの動きがいくつかあるのですが、このエルボー合戦はその苦手な応酬のひとつ・・・正直なところ、これが始まると思わずうつむいてしまうほどであります。


しかし、ただ“嫌い”と言ってくすぶっているおれたちじゃーない。疑問があればネタにして、ブログでやってのける命知らず。不可能を可能にし、巨大な悪を粉砕する!おれたち、特攻野郎Aチーム!!

スミス!!おれはもうカンベンできねぇ!!


というわけで・・・このエルボー、ちょっと掘り下げてみようではないですか。


さて、近年ではプロレスを見れば必ず目にするようになった、まさに猫も杓子もなエルボーの乱発。その打ち合いは、ファンから掛け声まで掛かるようにまでなりましたが・・・ところでこのときに使われるエルボーって、エルボー何?


実はエルボーには何点かの呼び名があります。ちょっと技の名称をあげてみると、エルボー・スマッシュ、エルボー・バット、エルボー・スタンプ、エルボー・ドロップ、エルボー・プッシング・・・と、同じヒジを使うにしても、状況に応じて多様なんですね。


この中で、エルボー・ドロップは寝ている相手へ、エルボー・プッシングは寝技の状態で相手の顔面へヒジをこすりつけるような形での攻撃になります。スタンドだとヒジを曲げた内側の部分で打つエルボー・スマッシュ、屈んでいる相手の後頭部や座っている相手の脳天に振り下ろすエルボー・スタンプ、立っている相手の正面から打っていくエルボー・バット。となりますが、エルボー・バットは曲げたヒジを縦に振りおろして打つ方法と、ヒジを横に出して横殴りに打つ方法と、カウンターで多用される、やや後ろに構え相手との出会いがしらにバックハンドのように打っていく方法と、この3つがそれにあたります。ということは現在のいわゆる“エルボー”は、どうやら立っている相手に横殴りに打つ方のエルボー・バットに定義されそうです。


しかしこのエルボー・バット、一体いつプロレスに出現したのでしょうか?


エルボー、ヒジでの攻撃の歴史を考えてみると、真っ先に思いつくのがタイ国で400年の歴史を誇るムエタイ。そしてその起源は紀元前200年以上とも言われる中国武術、クンフー。そしてそして一説には700年前に発祥という説もある日本の伝統の武道、空手。この辺があげられると思います。


しかしこれらのヒジの使い方はどれも独特で、プロレスに精通している様子はありません。プロレスでのヒジ攻撃は一体どこからきたんでしょうか?


プロレスの古い書物や映像を見てみても、試合でレスラーがヒジを使っているシーンというのは探してもまず見当たりません。そんな中、以前からレフリーのブラインドをつきながら、チョンとヒジを相手に当てるレスラーには心当たりがありました。そう、20世紀最強のレスラーと謳われた鉄人ルー・テーズです。


テーズは自身の得意技、バックドロップの態勢へ相手を誘惑するためヘッドロックからのショート・パンチをレフリーに見えない位置で連発する、という攻撃を得意としていました。この必要以上のテーズのパンチの連打が嫌で、相手は食らいたくない一心で回避しようと思わずテーズをヘッドロックにとらえてしまうのです。しかしこれはテーズの思惑通り。そこへ必殺のバックドロップがさく裂、というわけです。まさに真夏の海の家でペットボトルのジュースが1本500円で売っているのを高いと思いながら、その暑さとそこにしか売ってないという理由で、わかっていながら買ってしまうような心理ですね(え、そうかな!?)


で、このショート・パンチのとき、テーズはときおり左ヒジを相手に当て、右手の拳で左手の平をパンチして反動でエルボーを当てる、という攻撃をやっていました。グランドでもSTFの態勢から、ときおり同じ方式でヒジを当てることがあり、ヒジでの攻撃を有効に使っていたようです。しかし、これは現在のエルボー・バットと比べれば・・・様子は異なりそうです。


では現在のエルボー・バットのような形を早々に使っていたレスラーというのはいたのでしょうか?実はこのテーズを現役時代に、生涯たった一度だけエルボー・バットらしき技で流血させた人物がいると言います。誰ならぬカール・ゴッチです。


ゴッチとテーズは生涯で試合を9戦行ってているようなんですが、そのうちのひとつ、64年8月にアメリカのフロリダ州タンパで行われた試合でこの出来事はあったようなのです。


このときどんな形でテーズが流血してしまったのかは謎ですが、テーズの自伝ではゴッチのエルボー・スマッシュで切ってしまい流血した・・・という記述があるので完全にとは言えませんが、流血を誘うならエルボー・スマッシュではなく横殴りのエルボーバットを使用したかもしれない可能性が高まります。


確かにテーズ左の眉のあたりから流血が見られるが・・・


これが現実だとすると1964年には、すでにエルボー・バッドはプロレスにあった・・・という期待が持たれますね。


さらにゴッチは日本プロレスに来日している時代には、このエルボーを使っているようなのです。ということはエルボー・バットはヨーロッパ発祥か?ますます期待感が膨らみますが、しかしそのエルボーを使っている写真がどこからも出てきません。残念ながら、これでは検証は難しいですねぇ・・・


ということで、ここで視点と方向性を変えてみます。


エルボー、先に述べたように現在では打ち合う使われ方をされていますが・・・ボクらがプロレスを夢中で見ていた小学校、中学校時代。エルボーでの攻撃が得意なレスラーといえば、誰がいたでしょうかね?


テリー・ファンク、ドリー・ファンク・ジュニア、ディック・マードック、ダスティ・ローデス、スタン・ハンセン、ディック・スレーター、ボビー・ダンカン、ロン・バス、ボブ・オートン・ジュニア・・・


ざっと見てみればエルボーの名手ばかりですが・・・これを見て何か気がつきませんかね?


そう、ほとんどがテキサスを主戦場にしていたカウボーイ・スタイルのレスラーなんですよ・・・何か、カウボーイ・スタイルのレスラーはエルボーを使う傾向があるように感じます。もしかしたらエルボーの発祥はカウボーイ・スタイルのレスラーなのでは!?


カウボーイ・スタイルのレスラーのパイオニアといえば、ブルドッギング・ヘッドロックの考案者であるカウボーイ・ボブ・エリス、そしてオクラホマ・スタンピートの考案者であるカウボーイ・ビル・ワットが有名ですが、彼らがエルボーの先駆けという記述は見られませんでした。


さらに先にあげたレスラー達のエルボーを調べれば、打ち方はヒジを縦に振りおろして打つ方法のエルボーになりますね・・・


様々なエルボー攻撃を駆使したディック・マードックだが、横に殴るエルボー・バットは使わなかった


そして、このエルボーの使い手として絶対に忘れてはならないレスラー、妖鬼、金髪の爆撃機といわれたジョニー・バレンタインも打ち方はヒジを縦に振りおろして打つ方法のようでした。


そのあまりの威力に“毒針”と称されたバレンタインのエルボー殺法


バレンタインは1946年にデビューし早くからエルボーでの攻撃を取り入れています。ショーマンを嫌い、ケンカ殺法が得意だったバレンタインのパンチやエルボーは、振り上げただけで相手が硬直してしまうほどの貫録を誇ったといいます。またスタミナもあり、タフさも天下一品。今ではいなくなってしまった、対戦相手に恐怖を感じさせることのできるレスラーでした。


バディ・ロジャースの足四の字にエルボーで応戦するバレンタイン


しかし、こんなエルボー・バットの名手のバレンタインでも、やはり横殴りのエルボーは使っていなかったようです。


では・・・先にあげたレスラー達で、横殴りのエルボー・バットを使っていたレスラーはいなかったのでしょうか・・・いや、ひとりだけいましたね!ドリー・ファンク・ジュニアです!!


ドリーが、ときには“1ダース攻撃”と呼ばれるほど連発を披露したエルボー・スマッシュが得意だったのは有名ですが・・・


ご存じドリーのエルボー・スマッシュ


NWA世界王者として来日していた日本プロレス時代から、パンチの応酬の末に自らロープに後ずさりし、エルボー・バットで返す、という攻撃をすでに見せていました。


殴り合いから、形勢逆転を狙う際によく出したドリーのエルボー・バット


このドリーのエルボー・バット、自らが使い出したのでしょうか?もしかしたらこのドリーのエルボー・バット、ファンクスに源流があるのではないでしょうか!?と思い遡っていくと、やっぱりあの名レスラーに突き当たりました。そう、父のドリー・ファンクです。


ドリー・ファンク


ドリー・ファンクは言わずと知れたファンクスの父親。息子ドリーのマネージャーとして日本プロレスに初来日したときにはすでに50歳だったので、イメージは上の画像のような印象が強いですが・・・とりあえず現役時代はどんなレスラーだったのだろうか?と、古い本を取り、何十冊とめくっていくと、なんとボクの目の前に若き日のドリー・ファンクが繰り出す横殴りのエルボー・バットの写真が!!


これは!!


残念ながらこの写真には日時がない為、いつ頃使っていたかどうかはわかりませんでした。しかし1945年頃にデビューしているドリーにして、写真から察するにかなり若い時代のものと判断できます。さらに!驚くべきことに、ドリーのスポーツの経歴に、なんと空手の文字が・・・ドリー・ファンクは空手の経験者だった!?


ということは・・・あくまで仮説ですが、もしやドリー・ファンクは空手のヒジ打ちにヒントを経て、プロレス流にアレンジしてプロレスに持ち込んだ!?のでは・・・!?


結局、真実はわかりませんし、ヨーロッパ発祥なのかアメリカ発祥なのか、いつ、誰がどこで最初に使ったのか・・・それを調べるのは今や夢物語になってしまったのかもしれません。ただこれが現在と同じ横殴りの形のエルボー・バットの、最古の画像では・・・と思います。


それでは続いて日本人の、日本におけるエルボー・バットの歴史は・・・どうでしょうか?


1954年2月19日、初の国際試合として力道山・木村政彦とシャープ兄弟の対戦がテレビ放送されて以降、先にも話が出ておりますカール・ゴッチ以外には日本プロレス時代にエルボーを使うレスラーの記述は見当たらりませんでした。しかし、日本人のエルボーの使い手を調べていくと、意外なレスラーの名前が出てきました。なんと豊登です。


ボクにとって豊登は


「テレビがなかった頃は、よく近所のでいじんどん(大臣殿・・・ようはお金持ちの家)に行って、みんなしてプロレス観たんだ」


という母親の昔の話の中で、よく名前を聞いたレスラーでした。


「こう、脇の下をスッパーン、スッパーンとやっとな、外人がたまげで逃げんだよ。強かったんだど~」


確かに・・・このスッパーンは有名で、いろんなところで聞いた覚えがあります。しかしスッパーンはさておき、怪力、パワー殺法が売りだった豊登がエルボーを使っていたとは本当なんでしょうか?探してみると出てきたのは・・・


おお!?


これは確かに豊登のエルボーですね。しかしこれはエルボー・バット・・・?いや、エルボー・スマッシュなんでしょうか?見方によってはどちらにも見えますが、残念ながら豊登がエルボーをやっている動画が見つからず、残念ながら判別は不可能ということになりますね。


さて、豊登以降(と言っていいのかどうかは微妙ですが)おそらく得意技という定義に入るほどの使い手がいなかった日本人でのエルボー・バットですが、いざというときの大試合や大一番でこの技を使うレスラーがいましたね。そう、アントニオ猪木です。


猪木のエルボー・バットは歴史の節々では必ず見られた


猪木は古くから異種格闘技戦や、ここ一番の大きな試合になるとエルボーを繰り出していました。しかしそれは連発をするわけでもなければフィニッシュにしていたわけでもありません。形勢逆転、そしてラフにおける場面で使っていたように思えます。


全日本ではジャンボ鶴田が若かりし頃より使っていました。こちらはファンクス、ドリー譲りと言っていいかもしれません。


長身の鶴田は上から振り下ろし気味に見舞っていた


しかし鶴田も連発していたわけではありません。猪木と同じく、形勢逆転やラフに転じたときエルボー・バットを使うことが多かったですね・・・


思えば、たった一度の激闘、アントニオ猪木とビル・ロビンソンの対決でも、ロビンソンのエルボー・バットが見られました。そしてボブ・バックランドはデビューからMSGでメインを張っていた時代でも見せたことのなかったエルボー・バットを、新生UWFでの船木戦で突然出しました。目を潰され、鼻を折られの壮絶なケンカマッチになったあの一騎打ちでも・・・それまで使ったことのなかったエルボー・バットを、ハンセンは渾身の力を込めてベイダーに見舞っていきました。


テレビを伝って振動まで伝わってきそうな一撃だった


88年8月、俺たちの飛龍革命・・・あの猪木戦でも、それまで見せたことがなかったエルボー・バットを渾身の力で見舞っていった藤波がいました。


ジャンプしながらの一撃には会場もどよめいた


これらを見ていくと・・・脚光を浴びていない技だったこともあり写真に納まる機会が少なかった為、資料が残っていないだけで実は日本マットでは折々にレスラー達に使われていたのでは・・・?


エルボー・バット・・・実はレスラーの試合の、勝負の折々で重要な役割を果たしていたのではないでしょうか?そう、使えないわけではないが、使わなかったわけではない。横殴りのエルボー・バットとは本来、普段は使わないが、いざとなったときに抜けるように持っているプロレスラーの懐刀的な技、なのではなかったのでしょうか?そう考えると、もしかするとテーズが流血してしまったときゴッチには、それを使わなければならない理由があったのかもしれないですね・・・


しかしそれを開拓、打破していったのが三沢でした。三沢はこの技に新しい命を吹き込んで、懐刀でもあり、フィニッシュでもある技へと進化させていきましたね。


やっぱり“三沢のエルボー”という言葉はしっくりくる


とはいうものの近年のエルボー合戦、やっぱり三沢が使ってから・・・というのが影響が大きいかもしれません。以降、マネするヤツもたくさん出てきました。しかし三沢のエルボー・バットは色あせてしまったでしょうか?


たとえば昔、みんなは三沢が小川直也とタッグでやるって聞いたときどう思いました?三沢のエルボーが小川に放たれたとき、どうなるかな?って思いませんでした?橋本と絡んだ時も思いませんでした?なぜそう思いました?三沢のエルボーだからじゃないですか!?エルボー・バットにスポットを当ててフィニシュヘと持って行った三沢だから、それで多くのレスラーを倒していった強烈なエルボーの三沢だから、そういう期待を持てたんではないですかね?


かつてプロレスにはラリアートが、パワーボムが・・・まるでバーゲンセールのように行われていた過去がありました。やっている方の気持ちはどうなのかわかりませんが・・・みんながやるからおれもやろう!流行っているからおれもやろう!間がつなげるし簡単だ!もしかしたら今のエルボー合戦も、そうなのかもしれません。でも、それでいいのかな?


あなたの考えは古いよ。今はそういう時代なんだよ!!そう言うファンも、いや、むしろそう言うレスラーがいるかもしれません。ボクの考え・・・それは否定はできません。古いのかも・・・しれません。


でも、大勢いるレスラーの中で、他人にできないことを、自分にしかできないことをやるから記憶に残るレスラーなんじゃないのかな?後世まで語り継がれるレスラーなんじゃないのかな?何も派手なコスチュームを着ろとか、アクロバチックな技を繰り出せという意味じゃない。プロレスの中で出す味、レスラーとしての味じゃないかな・・・それが出せて初めてレスラーで、そのレスラーが戦ってプロレスなんじゃないのかな・・・ボクはそう、思います。



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