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Channel: 団塊Jrのプロレスファン列伝
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名レスラー伝~地獄の大悪党!!グレート東郷 その7 最後の日本①~

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探偵「さて、日本プロレス界から追い出された形となり、馬場さんのアメリカ定着計画も失敗してしまった東郷ですが、その後はどうなったのでしょうか?」

先輩「日本へ来ることはなくなり、みんなも忘れかけていた頃・・・ひょんなことから東郷は、また日本へ現れることになる」

探偵「それはどんな形ででだったんですか?」

先輩「うん。まず・・・66年10月に日本プロレスを辞めた吉原功が国際プロレスを設立したんだ。ヒロ・マツダをエース兼ブッカーとしスタートし、マツダのルートからジョニー・バレンタイン、ダニー・ホッジなどの実力派の大物を招聘し素晴らしい試合を展開ていたが、テレビがついてないことや知名度の高いレスラーがいなかったため客足は満足できるものではなかった」


国際プロレスの初期の柱だった左から吉原、マツダ。東京プロレスが提携していたため豊登もいる

探偵「旗揚げ戦で行われたマツダvsホッジなんて本場直輸入の贅沢な対戦カードでしたが、でもそれは今にして思うことで・・・やっぱり当時は万人受けは難しかったわけですね」

先輩「そうだね。それに運営資金も低かった。興行収入は日本プロレスに大きく水をあけられていたうえに、国際プロレスがビッグマッチの日には、日本プロレスが同日にビッグマッチを当ててくることがほとんどだった。直に言えばつぶしだね。圧力をかけられていたんだ」

探偵「東京プロレスにもそうでしたが、日本プロレスって結構性格悪いですよね?」

先輩「確かにね。でも、たとえば今、日本相撲協会の人間が協会を離れ、日本にもうひとつ相撲協会を作って巡業や本場所やり出したとしたらどうだろう?当時の日本で日本プロレス以外のプロレス団体を作り運営するというのは、それくらい大変だったんだよ」

探偵「そうかぁ・・・日本プロレスからすれば目の上のタンコブ、邪魔であり"おもしろくない存在"ってことだったわけですね」

先輩「そうだね。で、まあこんな風にいろいろあって大変だった。そこで運営資金のため、吉原はテレビをつけるべく動きTBSでのテレビ放送に漕ぎ着けるんだ」

探偵「テレビ放送が定期的に行われれば団体もレスラー個人の知名度も上がり会場への客足も期待できますもんね。それに放送権料も入ってきますし」

先輩「そう。そしてもうひとつ。国際プロレスは某企業の社長を会社の相談役に構えたんだ。つまり企業が国際プロレスのオーナーとなったわけだね」

探偵「スポンサーではなく企業の傘下になったわけですか・・・これで資金面での心配はなくなったようには思えますが・・・」

先輩「お察しの通り。企業がプロレスに参入すると、良からぬことが起きるのがプロレス界。ここから紆余曲折が始まるんだ」

探偵「あ~・・・」

先輩「まず、当時TBSの運動部副部長だった森氏と、オーナーとなった、広島にあった三ツ矢乳業の当時社長だった岩田氏は手を組み、新体制の路線確保に動いたんだ。ふたりはアメリカを訪れグレート東郷と会談し、外国人の招聘役であるブッカーを東郷に頼んだ。そしてさらにふたりはカナダに飛びプロモーターのフランク・タニーに働きかけTWWA(トランス・ワールド・レスリング・アソシエーション)なる団体を設立。この初代王者にルー・テーズを認定し来日への準備を整えたんだ」

探偵「海外のプロレスにパイプがなかったふたりが東郷と会ったあと、カナダで面識のなかったプロモーターにタイトルを新設してもらい、しかも王者に認定されたのがルー・テーズ・・・カナダのフランク・タニーのマーケットは坂田との東郷ブラザース時代は東郷の主戦場でしたよね。フレッド・アトキンスとも仲のよかった東郷の、昔から顔が利くところでしたよ。このあたりからすでに東郷のコントロールですよね。それにしても、ここで東郷が現れるとは・・・まさか!?って感じですね」

先輩「倒したのに実は倒せてなかった・・・東郷は、まるでアニメやゲームのラスボスそのものだよ。かくして日本プロレスから追い払われた形で日本をあとにしたグレート東郷が4年ぶりに日本のプロレスに参入するんだが・・・」

探偵「でも・・・国際は、そもそもマツダがブッカーを兼ねていたわけですよね?」

先輩「そうだったんだが、新しく切り替わった運営体系でブッカーもマツダに代わり東郷となったんだよ。マツダは当然、これには拒絶反応を示すが、ブッカーを切り替えられたより東郷への不快感がすごかったようだよ」

探偵「マツダは東郷を良く見てない方だったんですね」

先輩「そのようだね。これによりマツダは国際プロレスを離脱することになる」

探偵「そうですよね・・・」

先輩「こうして68年1月、この団体のオープニング・ワールド・シリーズに東郷はやってきたんだ。団体名も国際プロレスからTBSプロレスとなり、テレビが入り新オーナーの下、新たなスタートを切った。こうして開幕戦は1月3日の日大講堂から、最終戦は1月28日の福島市体育館で1ヵ月、行われたわけだ」

探偵「いろいろありましたが、なんだかんだで東郷のブッキングですからメンバーはすごかったんじゃないんですか?」

先輩「まさしくね。このシリーズに参加した外国人レスラーは、ルー・テーズ、ダニー・ホッジ、ハンス・シュミット、ワルドー・フォン・エリック、ブルドッグ・ブラワー、クラッシャー・コワルスキー、レフェリーでフレッド・アトキンスという、そうそうたるメンバーだ」

探偵「テーズとホッジが顔を揃えて参戦とは・・・やっぱり東郷はすごいですよ」


まさしくワールド大リーグ戦並みの豪華メンバーが揃ったオープニングシリーズ

先輩「まったくだよ。このあたりは東郷、さすがとしか言いようがない。しかし、ここで事件が起きる。オープニングのシリーズ第一戦目にしてテーズが保持するTWWA世界ヘビー級のベルトにグレート草津が挑戦したんだが・・・」


グレート草津(左)とサンダー杉山

探偵「66年デビューの草津は、このときはキャリア2年くらいですか・・・しかし試合経験もそれほどなかった草津が団体の威信をかけたオープニングのシリーズ一発目で、なぜ挑戦者に抜擢されたんですか?」

先輩「TBSとオーナー、つまり運営側には草津をエースにする計画があったようなんだ。そのためには、やはりインパクト絶大な話題は不可欠。そこで目論まれたのが期待のホープ草津がテーズを倒し世界タイトル奪取というストーリーだったんだよ。オーナーとなった島田氏は記者会見で

"一夜にして大スターというシンデレラ物語は昔の話。TBSの力を持ってすればスターは分単位、秒単位で作って見せる"

と言い放ったんだ」

探偵「なんかイラッとしますね」

先輩「しかし、さらにイラッとくるのが・・・実は水面下で、テーズへ草津に負けるよう申し出していたらしいんだ」

探偵「や、八百長をやれと!?相手は天下のルー・テーズですよ!!正気じゃないですよ!!」

先輩「当然だ。だからTBSプロレスの開幕戦となった1月3日の両国の日大講堂での試合で、テーズは3本勝負の1本目で草津をバックドロップで叩きつけ失神させ、3本勝負を1本目で終わらせたという説が残っているんだ」


バックドロップを受け失神した草津を気づかうテーズとレフリーのアトキンス

草津は控室に戻っても完全なグロッキー状態だった

探偵「いやぁでも、それはそうですよ。20世紀最強のレスラーと謳われたテーズがデビュー2年足らずのレスラーに負けてくれなんて言われたら・・・テーズの怒りが感じられますよ」

先輩「しかし、草津の話だとちょっと事情がちがってくる。1本目はバックドロップを食らい破れた。これは事実だ。しかし1本目直後、2本目に入る前に意識があった草津に"起き上がらずそのまま寝ていろ"と言った人物がいるんだ」

探偵「まさか!?東郷が!?」

先輩「そう。この試合でセコンドについていた東郷だ」

探偵「な、で、でもなぜそんなことを・・・?」

先輩「わからない。だからここからは推測を交えて話すね。東郷は、ブッカーに決まったあとTBS側から草津・新エース案を聞いたそうなんだが、さすがにこれはやめた方がいいと言ったそうなんだ」

探偵「金の方に動くと思われがちな東郷ですが、プロレスのキャリアはあるし何十人とマネージメントしてきたわけですからね。そのあたりは重々承知、当然の指摘ですよ」

先輩「うん。しかしエース案は通されてしまった。TBS側もオーナーも資金はあったにしろ、プロレスにはド素人だった。だから何もわからずに、こんな無謀な案を出して通してしまったんだよ。プロレスはその場だけの話題性でなんとかなるもんじゃない。プロレスラーとしての実力、見るものを納得させる能力がないとダメなことを自らも経験してきて承知していたから、東郷はやらない方がいいと言ったと思うんだ」

探偵「そして、そうか・・・自分の言葉は参考にもされなかった。しかもテーズに負けを催促した。結果テーズは報復手段に出た。ほら見たことか!!東郷からすれば案の定だったというわけですね」

先輩「そう、だから・・・寝ていろと言ったんだと思うんだ。そんな試合、もうやらなくていいってことだったんじゃないかなぁ」

探偵「しかし、草津の気持ちはどうだったのでしょうか?意思とは関係なくエースに祭り上げられ、自分が悪いわけではないのにバックドロップの犠牲になり・・・」

先輩「確かに気の毒だよね。けれど、嫌う人間が多い中で、グレート草津は東郷を親う人間のひとりだったんだよ。草津は東郷に相当かわいがられていたらしい。海外では自宅に泊めてもらってお世話になったり、食事もずいぶんごちそうになったそうだよ。草津が東郷に世話になったときと馬場さんが世話になったときのキャリアはそんな変わらなかったのに、明らかにちがう感じでね」

探偵「東郷は現状のできる限りで草津を守りたかったのでしょうか?」

先輩「どうだろうなぁ・・・東郷は立場上、テーズvs草津の試合をやめさせるわけにはいかなかっただろうし、でも可愛がっていた草津をなんとかしたかったって、わずかでもそういのがあったのかもしれないよね。だから試合はやっても、続けさせなかったんじゃないのかな・・・これは完全なおれの仮説だから、真実はわからないけどね」

探偵「もしかするとテーズと東郷の間では、新体制の運営側に一泡ふかせてやろうかなんて気持ちもあったかもしれませんが、ここは東郷の親心としときましょう。しかし先輩、その真実は謎にしろ、テレビ中継もされてた開幕戦でこの事態はその後の運営には大打撃だったんじゃないですか?」

先輩「まさしくだ。ルー・テーズを破り世界タイトルを奪取した草津を軸に展開されていくというTBSプロレスの目論みが泡と散ったこのあとは、TBSプロレスの方向性は大きく乱れた。本来は草津の4週連続タイトルマッチとなるはずだたが、この事態で変更され、その後はサンダー杉山、豊登がテーズのタイトルに挑戦するが結果及ばす。客足も振るわなかった。だが最後の週、対戦相手の打つ手も尽きた頃、ここで東郷が動いた。仕掛けたんだ」

探偵「何をしたんですか!?」

先輩「日本プロレスから大木金太郎を引き抜いて挑戦させるという仰天案だ」

探偵「お、大木金太郎を!?」

先輩「そう。大木は力道山の死後、失意のうちに韓国へ戻ってプロレスを続けていたが、66年3月に猪木、豊登が東京プロレス旗揚げのために日本プロレスから去ったため、その穴を補うべく日本プロレスから呼ばれエース馬場さんに次ぐ存在として活躍していたんだ」


大木金太郎

探偵「事情はちがえど、大木も東郷と同じく、一度は日本を去っていたんですね・・・」

先輩「うん。力道山が生前、最も可愛がったのが実はこの大木だったそうだから、絶望間はただならないものだったんだろうね。しかし日本へ行く縁がまたあり、日本プロレスで活躍していたが・・・67年5月に猪木が東京プロレスから復帰しBI砲復活に湧くと、大木の出番も少なくなり日本プロレス内ですっかり息を潜めてしまっていたんだ」

探偵「困ったとき呼んどいて、大丈夫になれば放置みたいな・・・大木にしたらせつない話ですよ」

先輩「東郷はそこに目を付けたんだね」

探偵「人間の心理と日本プロレスの間隙を縫った東郷の仕掛けですか・・・」

先輩「プラス・・・大木も東郷を親う人間のひとりだったんだ。海外武者修行時代、自分が海外のいろんな場所で有名な選手と試合でき、WWAの世界タッグ王者にまでなれたのはずっと世話してくれた東郷のおかげだと恩を感じて止まなかった。いわゆる恩人だったんだ」

探偵「なるほど・・・そんな東郷から、ユーに来てほしいと、メインのリングでルー・テーズと選手権を戦ってほしいと言われれば、大木が動かないはずはなかったと」

先輩「そう。こうして大木は1月17日に日本プロレスに辞表を出した。TBSプロレスのリングに上がるため、当日は会場入りも済ませていた。が・・・」

探偵「が?ということは、TBSプロレスに大木は出場しなかった?」

先輩「うん。ここまで来て、日本プロレス側が阻止したんだよ。日本では東郷よりはるかに力があった、ある大物人物が寸前のところで説得し阻止したという。こうして東郷の策略は失敗に終わったんだよ」

探偵「固く決意し、会場入りまでしていた大木の登場を阻止するとは・・・説得というよりは強大な圧力を感じます。東郷の好きなようにはさせない!!という日本プロレスの意地が見えますね」

先輩「そう、そして東郷に、その日本プロレスが絡んだ事件がこのあと起きるんだ」

その8に続きます。

※今回はシリーズ全9回になります。コメント欄は最終回で開きます。よろしくお願いします。





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