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Channel: 団塊Jrのプロレスファン列伝
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名レスラー伝~地獄の大悪党!!グレート東郷 その8 最後の日本②~

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探偵「東郷により動いた大木。確実と思われたTBSプロレス登場が寸前にしてものすごい圧力で阻止された。そして事件ですか・・・東郷が行くところ、必ず事件がありましたが今度はどんな?」

先輩「まずグレート東郷・襲撃事件だ」

探偵「もう何か聞いてもびっくりしないと思ってましたが、ここにきて襲撃"された"とは・・・やっぱりびっくりです」

先輩「ああ。詳細は68年1月18日、深夜頃。東京千代田区の紀尾井町にあるホテル・ニュー・オータニに宿泊していた東郷の部屋に何者かが来て、そこで東郷が暴行されたというものだ。これにより東郷は暴行により大ケガを負い救急車で搬送される。現場に居合わせていた(と思われる)TBSプロレスの関係者により110番通報もされ、現場にはパトカー数台に制服、私服の警官が数十人駆けつけ騒然となった」

探偵「すごいやばい事件じゃないですか!!しかし部屋に堂々入るあたり通り魔的犯行ではなさそうですね。犯人は金品目当ての強盗か、あるいは顔見知り、個人に恨みを持つ者あたりでしょうか?」

先輩「いい読みだね。そう、普通ならひとりの人間が何者かに暴行されたという歴とした刑事事件になるところだが、東郷の部屋に来たのは日本プロレスでレフリーをしていたユセフ・トルコとプロレスラーの松岡巌鉄だったから、まさしく後者になるかな」

探偵「日本プロレスの人間だったわけですか・・・」

先輩「そうなんだ。事件は日付が変わってすぐの深夜にトルコが自ら出頭し明確になった。トルコは事情聴取を受け、東郷が先に手を出したため対応したと正当防衛を主張。だが東郷は一方的にやられたと主張した。事件は新聞沙汰になり、一般週刊紙でも多々取り上げられる事態となるが、結局、双方の言い分がちがったため警察は調書が取れず・・・結局は顔見知り同士の喧嘩とし、事件としてはこれ以上の混乱はなく終わったという事件だ」

探偵「結果的にレスラー同士のいざこざだったということになったわけですか・・・しかし、手を出したのがどっちが先か以前に、なぜトルコと松岡は東郷のところに来たんですか?理由は何だったのでしょう?」

先輩「結論からすると、東郷に頭キタ!!ってことになるかな」

探偵「はぁ・・・」

先輩「この事件は、先ほども言ったようにトルコ側と東郷側の言い分がちがうんだ。トルコ側は東郷に以前、TBSプロレスをやめろと言ったのに、やめてないのはどうしてなんだ?と・・・そもそもは、その話し合いに来ただけだと主張したんだ。しかし話ているうちに口論的になり、東郷がビール瓶を振りかざしてきたから自己防衛した結果こうなったという」

探偵「東郷側はどうだったんですか?」

先輩「東郷側は部屋にふたりが入るなり一方的に、すぐにやられたという主張だ。松岡が羽交い締めにしトルコがメリケンサックを用いて殴ったという話もある」

探偵「トルコは偶発的、東郷は意図的という主張だったわけですね。でも・・・タイマンならともかく、ついこの間までレスラーだった、しかもケンカが強かったというトルコと現役レスラーのふたり相手に、東郷が先に手を出しますかね?」

先輩「そうだね。これまで東郷を調べてきたわけだけど、そのあたりから推測すると性格上自分からはやらないだろうとおれも思う。東郷もトルコも亡くなってしまい真相は 永遠に謎だけど・・・とにかく言葉ではいろいろ言い表されているが、東郷がやられたこと、そしてTBSプロレスをやめろと言った、言われたのやりとりがあったのは間違いないようだ」

探偵「結局、最大の理由は日本プロレスと東郷の確執ですか」

先輩「だろうなぁ・・・日本プロレスからすれば、TBSプロレスに協力した東郷は日本プロレスと力道山を裏切った裏切り者だった。東郷自身が力道山と築き上げた日本プロレスがあるのに、他団体に協力するとは!!っていうね」

探偵「確かに表向きはそうかもしれませんけど、日本プロレスも速攻で東郷を追い払っておいて、よく言いますよね」

先輩「ああ、だからこれは建前で、実際は

"嫌いなヤツが好き勝手やってるのがおもしろくなかった"

が妥当だろうね」

探偵「う~ん・・・」

先輩「で、これは真実かどうかは不明な情報なんだけど、東郷が日本プロレスを去るときに、もう日本のプロレスへは関わらないという密約があったという話があるんだ。その手切れ金も受け取っていたという噂もあるから・・・」

探偵「そうなってくると話がちがってきますね」

先輩「そうなんだ。事実なら、襲撃されても仕方ない」

探偵「でも・・・一番の要因は、やっぱり嫌われていたからなんでしょうね。やっといなくなったと思ったら忘れた頃に現れて、他団体で外国人のボスになり我がもの顔をしている。ゆくは選手の引き抜きまで仕掛けたとあれば、これは頭にきちゃいますよ。ただでさえ他団体が爪弾きされていた時代ですからね」

先輩「そうだよなぁ。暴行はいけないけど、でもこの場合はある意味やられても仕方ないよ」

探偵「そういえば先輩、最初に"まず"と付けていましたか、まだ事件があるんですか?」

先輩「ああ、そうだったね。日本のプロレス史上でも類のない事件があった。グレート東郷・暴行事件のあとにあったもうひとつの事件は、外国人レスラー試合ボイコット事件だ」

探偵「な、なんですかそりゃ!?大木金太郎引き抜きに失敗しトルコに襲われた東郷でしたが、このときはまだ日本にいて・・・ブッキング役は続いていて、その線で何かあったってことですか?」

先輩「そう。事件のあとも日本にいてブッキング役をしていた東郷は、オープニングのシリーズが終わると襲撃事件の約2週間後になる1月31日の横浜文化体育館から2月21日浦和市小松原男子高校体育館まで全7戦で行われる次のシリーズ、ワールド・タッグ・シリーズの準備に入ったんだ」

探偵「はい」

先輩「このシリーズでは前シリーズから残留のダニー・ホッジ、同じくブルドック・ブラワーと、新たに来日したフレッド・カーリーに、2月14日のみ特別参加のトシ東郷が参戦する。そして目玉は初来日となったアル・コステロ、ドン・ケントのザ・カンガルーズだ」

探偵「タイガー・スープレックスの原型オースイ・スープレックスの使い手アル・コステロですね!!こういうとこ見ると、やっぱり東郷のブッキングすごいんだなと思いますよね」


ザ・カンガールーズらを出迎える東郷

先輩「まったくだ。で、シリーズもまさしくザ・カンガルーズが主役のタッグ戦線となったが・・・最終戦も迫ってきた2月19日、浜松大会にて事件が起きた。なんとこの浜松大会に外国人レスラーがひとりも会場入りしなかったんだ」

探偵「ひとりも!?東郷の仕掛けなんでしょうけど、これはなぜ・・・」

先輩「うん。この大会の前日まで3日間がオフだったため外国人レスラーはみな東京のホテルににいたんだが、東郷はここでレスラー全員を止め出場させなかった。理由は、TBSプロレスが約束した金を持って来なかったから。レスラーをタダで働かせるわけにはいかない!!ということだった」

探偵「ということは、素直に受け止めればTBSプロレス側にギャラの未払いがあった!?ということに!?まあ東郷絡みじゃそうとも言いきれないんでしょうけど・・・」

先輩「まさしくね。未払いといえば未払いかもしれないけど・・・どう解釈するか、とりあえず東郷が取っていたブッキングシステムを説明してみよう」

探偵「はい」

先輩「ひとシリーズは、だいたい4週間くらいだよね。その上でシステムは、このシリーズに参加させたい、呼びたい外国人レスラーをTBSプロレスで決めてもらい、その指名されたレスラーへ東郷が交渉して来日させる、というものだった。話だけなら簡単だけど、指名されたレスラーを確実に来日させるというのは、これは"力"がないとできないことだよね」

探偵「まったくです」

先輩「で、ギャラの支払いなんだが、これは東郷が請求し、まとめて受け取った金を各レスラーに分配するという形だ。しかしこれがなかなか巧妙なんだ。事件の発端となった詳細は、

①契約書には支払い金額の提示がなかった(おそらく細かな決まりがなかったと思われる)

②支払いは"何人で何円"というどんぶり勘定的なものだったので、どのレスラーにいくら支払われていたのか?の詳細が不明だった

③詳細が不明にしろ、レスラーの人数に対し支払いがあまりにも高額だった

といった感じだったそうだ」

探偵「内訳は明かされないからレスラーひとりいくらというのと、東郷へのパーセンテージがわからなかったわけですね。で、トドメに法外だったと」

先輩「だからTBSプロレス側は、もしかしたら東郷だけに大量に金が流れているんでは!?と疑問視するようになってきたようなんだ。だが東郷に言わせれば

"日本にはブッカーというシステムがないから、TBSプロレスはワシだけが儲けていると思っている。が、それは非常識だ。それではアメリカのブッカー全員が迷惑する"

という・・・つまり、このシステムがアメリカでは通常のやり方だったという主張だった」

探偵「確かに・・・法外な金額という点だけはわからないですが、アメリカならまず利益はプロモーターですよね。そこからブッカーやマネージャー(監督的な役割の人)に振り分け、そこからレスラーじゃないですかね?昔の外国人レスラーの自伝を読んでると、そういう節は見受けられますよ。東郷の言っていることは間違っていないかもしれません」

先輩「加えてね、ブッキングされるレスラーの人数だよね。東郷をかばうわけじゃないが・・・そもそもアメリカには日本とちがってシリーズというものがなかった。だから月一度レスラーをまとめて数人ブッキングするなんてことはなかったわけだ」

探偵「プロモーターのマーケットにプロモーターの抱えているレスラーがいて、そこに他から単発でブッキングされてくるような形ですね」

先輩「うん。でもTBSプロレスの場合はシリーズだから一度にレスラー6人、レフリー1人、ブッカー1人だったわけだ。単純に、レスラーひとりだけのギャランティとレスラー6人分のギャランティ、どっちが多い?ってなれば小学生だって答えはわかるよね」

探偵「しかもルー・テーズ、ダニー・ホッジ、ハンス・シュミット含むですからね・・・まあ真実は謎ですが、とにかくこの疑われ、疑問視を察知した東郷が制裁に出たんでしょうね。おれの言う通りやらないとこうなる・・・という、力の誇示だったと」


ボイコットの件での記者会見。東郷を中央に参加外国人レスラーが脇を固める。葉巻をくわえ、まさにボスそのものの東郷

先輩「うん。で、とにかく突然、こんな事態になってしまったTBSプロレス側は浜松大会では金を用意し東郷へ渡そうと探し回った。しかし東郷に会うことができなかった。どうやら東郷が故意に会わないようにしていたらしい。これも嫌がらせだったんだろう」

探偵「結局、浜松大会はどうなったんですか?」

先輩「浜松大会は外国人レスラーなし。入場料金は払い戻しされ、日本人レスラーのみで入場無料で5試合を提供したそうだ」

探偵「本当に参加させなかったんですか・・・大悪党ですよ、本当に」

先輩「しかし、さらなる大悪党ぶりが21日の埼玉の浦和大会で起きるんだ」

探偵「え!?これよりもですか!?」

先輩「うん。まず浜松大会後、3つの大会があったが、これはこの影響で開催することができずに終わった。で、この浦和大会は最終戦だったが、浜松と同じく東郷と外国人レスラーは試合をボイコットした。なのでこれまた同じく日本人レスラーのみの試合を行ったんだが、この日はテレビ中継が入っていたんだよ」

探偵「テレビが!?な、何をしたんですか東郷は!?」

先輩「東郷は大会中に私服姿の外国人レスラーを引き連れて現れ、リングに上がり、リングを独占してしまったんだよ」

探偵「リングを!?テレビの日に!?」

先輩「そう。そしてそのあと吐き捨てた言葉は

"テレビ放送がある日だったので行ったのに、TBSプロレスが我々を拒否をした"

だった」

探偵「血はリングに咲く花どころか、血も涙もないですよ・・・東郷のニックネーム、血笑鬼そのままですよ。なんて恐ろしい人なんだ」

先輩「だなぁ・・・まあ、東郷をブッキング役にすれば確かなブッキングルートで呼びたいレスラーが呼べる。大物でもだ。これは間違いない。東郷の"力"は普通じゃないからね」

探偵「はい」

先輩「確かに東郷は非情だった。おれもひどいと思ったよ。でもさ、TBSプロレスは東郷の仕事の意味と東郷を知らなかった。数分でスターを誕生させると息巻いたし、正直ブッキングのこともよく知らなかった。無理もない。プロレスのプの字も知らなかったんだから。だからやることも的外れだった。東郷からしたら、それの方がひどかったんじゃないのかな?プロレスを甘く見られるという行為が。そんな人間のやるプロレスを終わらせたかったんじゃないのかな・・・そんなこともちょっと思うんだよ」

探偵「東郷がブッキングした外国人レスラーは確かにすごいメンバーでした。当時の日本プロレスでも揃えるならかなりのギャランティが必要だったはずです。東郷は高額要求だったかもしれませんが、だからって安くすむレスラーではなかった。もしかしたらギャランティは妥当な金額だったのかもしれない」

先輩「結局、今となってはどれが正しかったなんてわからないけどな」

探偵「そうですね」

先輩「こうしてシリーズは終わり、このあと22日に外国人レスラーは全員帰国した。東郷はブッカーを外れ、TBSプロレスはわずか2ヵ月で放送を終えた。これが東郷最後の日本だった」

探偵「初来日の日本プロレスから、このTBSプロレスまで・・・東郷の行くところにはいつも何かがあったんですね・・・」

先輩「ああ・・・そして東郷の物語も、いよいよ佳境に入る」

その9に続きます。
 
※次回いよいよ最終回です。よろしくお願いします。




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