さて、パート2から続きパート3です。戦いは中盤から後半へと向かいます。
5月31日 埼玉県・大宮市体育館 (第18戦)
5月最終日は関東2戦目、埼玉です。この日はトーナメント戦はありません。注目はこちら。
WWFジュニアヘビー級選手権 60分1本勝負
ヒロ斎藤vsトニー・セントクレアー
○斎藤(8分48秒、ジャーマン・スープレックス・ホールド)セントクレアー
前回の選手権でタイトル奪取となった斎藤が初防衛戦。しかし納得の行かない結果だった斎藤はコブラにフォール勝ちするまではベルトを巻かない意思表示。ベルトを腰に巻かず手に持っての登場となりました。
試合は、ヨーロピアンな密着プレーで迫るセントクレアーに対し、斎藤は飛道具、投げ技を駆使し攻撃します。
長身でやりずらいセントクレアーにプランチャ、ドロップキックと空中戦で攻める斎藤
最後はスピードと安定感に定評のあるジャーマン・スープレックス・ホールドで勝利。完璧な形で初防衛に成功しました。
そして、前回不本意な結果で終わり納得のいかないコブラが試合後リングに上り再戦を迫ります。
スッキリとした決着をつけようとやり合う両者
このやり取りに対戦相手のセントクレアーもいささか興奮気味だったか?珍しいアピールで反応します。
コブラを完全フォールし晴れてベルトを巻くか?それともコブラの奪回なるか?次期シリーズで決着戦となりました。
特別試合 45分1本勝負
アンドレ・ザ・ジャイアントvsスーパー・ストロング・マシーン
アンドレ(2分38秒無効試合)マシーン
トーナメント参加の権利を得、不戦勝とはいえトーナメント2回戦に進みながらも一方的に出場放棄したマシーン。若松との遺恨、藤波戦への葛藤から29日には猪木から「まず若松らを一掃すべく組まないか」という意思をプロレスマスコミを介し伝達され、マシーンの心中は揺らぐばかりでした。
こうした中、本来はトーナメント2回戦で当たるはずだったアンドレvsマシーンの特別試合が実現します。
若松と手を組んだアンドレに対し仲間がいないマシーンはひとり。試合前から2vs1の様相となる絶対不利な戦いです。しかし、この状況になんと猪木が登場。そっちがふたりならと、マシーンのセコンドを勤めようというのです。
突如リングサイドに現れた猪木に騒然のリング上
しかし試合は、結局若松に翻弄されたまま試合にならず短時間にて無効試合となってしまいました。
アンドレに対し猪木ばりのローキックを繰り出すが、試合にならず・・・
荒れる若松に猪木が延髄斬りで制裁するも、マシーンは振り向かず・・・シリーズは月をまたぎいよいよ6月に突入。マシーンと藤波、猪木の関係は次期シリーズにもつれ込みそうです。
6月2日 新潟県・リージョンプラザ上越インドアスタジアム (第19戦)
月も変わってシリーズは信越、北陸地方に上陸です。しかしこの日はトーナメント戦、特別試合等はなし。気になる試合もありませんでした。
6月3日 福島県いわき市総合体育館 (第20戦)
北陸から東北へ。この日もトーナメント戦、特別試合等はありませんでした。おもしろいと思ったのは第6試合のモラレス、カネックvsコブラ、キャットというカード。11分23秒、回転エビでモラレスがキャットからフォール勝ちしていますが、モラレスとカネックのタッグは海外では皆無。ラテンの魔豹と仮面の魔豹の魔豹コンビ、ちょっと見てみたかったですね。
6月4日 岩手県・盛岡・岩手県営体育館 (第21戦)
さあ福島から北上して岩手です。トーナメント戦はいよいよ準決勝の第1試合です。
トーナメント準決勝
ディック・マードックvsアンドレ・ザ・ジャイアント
○アンドレ(6分49秒 体固め)マードック
ここにきて実現した好カードでしたが、試合前から若松の挑発に苛立つマードックは若松を捕まえんと追いかけます。試合開始後も自らリングを降り再三に渡り若松を追いかけるマードック。完全に翻弄されてしまった感じです。本来の試合になるのか不安さえ横切ります。
しかし、始まればさすがはマードック。大マードック・コールの中、アンドレのベア・ハッグを脳天エルボーで脱出するとストンピングでアンドレを追い込みます。

ラフならマードック。スーパーロデオマシーンの本領発揮だ
そしてマードックは、なんとアンドレにブレーンバスターを仕掛けます。しかしこれは無謀。アンドレにヒザ蹴りで返されてしまいます。ならばとチャンスを伺ったマードックはアンドレをもうひとつの必殺技カーフ・ブランディングへ!!

マードックの子牛の焼き印押し!!決まれば必殺だが!?
これを食ってはと耐えるアンドレは、これをデッドリー・ドライブで返し、最後は18文キックから体固め。世界トップレスラー同士の対決はアンドレが勝利し決勝戦進出となりました。
さてマシーンです。この日、高野俊二を相手に第6試合に出場したマシーンは7分50秒、高野の腕をアームロックに取ったまま後方に投げるという、これまで誰も見たことのないスープレックス・ホールドを初公開しました。
この技は一体・・・!?
やり方次第では腕を折ることも可能な危険なスープレックス。魔神風車固めがベールを脱いだ瞬間でした。
結局、藤波との対決は次期シリーズへ持ち越す形となってしまったマシーンでしたが、この日の新・必殺技を見ればマシーンがいつ何時も藤波に勝つことを考えているのかがわかります。対決、それはいつになるのか?マシーンの孤独な戦いはまだ続きそうです。
6月5日 新潟県 新潟市体育館 (第22戦)
東北から再び北陸、新潟へ再上陸。トーナメント戦は準決勝第2試合です。
トーナメント準決勝
藤波辰巳vs坂口征二
○藤波(13分41秒 スモールパッケージ・ホールド)坂口
さあ82年の第5回MSGシリーズ以来実に3年ぶりとなる両者の対決です。藤波は78年、第1回MSGシリーズでのシングル初対決から、これまで一度も坂口から勝利したことがありません。藤波、念願の決勝進出なるか?注目が集まりました。
試合は静かな立ち上がり。両者グランドから腕の取り扱いです。柔道仕込みの強烈な寝技を繰り出す坂口。しかしヘビー級となりパワーもついた藤波はグランドでも一歩も引かず。当時まだ旧UWFでしか見られていなかったクロック・ヘッドシザースなどを繰り出し互角の戦いを挑みます。
序盤はストロングスタイルの原点的戦いで幕を開けた
その後、坂口はジャンピング・ニーから、めったに出さない秘密兵器のブレーンバスター、そして河津落としと大技連発で追い込まんとします。これに藤波はドロップ・キック、ローキックからサソリ固めへと繋ぎ坂口の動きを止めます。
序盤の勢いで再び攻めたい坂口でしたが、ハイペースが響いたか?ここにきてペースダウン。なんとか活路を見出だそうと果敢にアトミック・ドロップ2連発。しかし2発目、これを藤波が交わし延髄斬り!!そして電光石火の首固めです!!

先輩の"壁"を見事崩したスモール・パッケージ・ホールド
首固め、いやこれは本来の名称である小包み固めと言った方がいいかもしれません。藤波、ついに坂口からピンフォール、念願の初勝利です。スリーカウント入ったのか!?そして腕を上げ大きくジャンプする藤波。それは奇しくも藤波が坂口と初対決をしたのと同じ年の78年の1月、MSGでカルロス・ホセ・エストラーダを破りWWWFのジュニアヘビー級タイトルを奪取したときのような喜び方だったといいます。さあ決勝はアンドレ。念願の猪木戦まであとひとつです。

優勝者はどちらになる!?
6月6日 宮城県・宮城県スポーツセンター (第23戦)
北陸からまたもや東北にブーメラン。戦いは宮城へ。トーナメント戦は決勝を残すのみとなったのでもうありませんが、戦いは続きます。
WWFインターナショナル・タッグ選手権 60分1本勝負
藤波辰巳、木村健吾vsディック・マードック、アドリアン・アドニス
(21分2秒 両者リングアウト)
前回リングアウトで破れた元WWFタッグ王者チームに、内容では押され気味だった王者チーム。両者、負けられない一戦となった試合は、バイオレンス・コンビが開始直後から、またも藤波をターゲットに攻めまくる展開です。マードックがバックドロップ、ドリル・ア・ホール・パイルドライバー、続くアドニスもバックドロップ、マンハッタン・ドロップと集中砲火。早々にカーフ・ブランディングまで繰り出し早くも藤波ピンチです。

巧みに王者チームを追い込むスーパー・バイオレンス・コンビ。やはり連携では一枚上だ
藤波はこの戦火を縫ってなんとか木村へタッチ。木村、アドニスへ改心の稲妻レッグラリアート炸裂!!しかしその後はバイオレンス・コンビの連携に捕まってしまい、なかなか勝機が見いだせません。結局両者持たれてリング外へ・・・
残念な結果に終わってしまいました。しかし、前回は試合後も荒れベルト強奪したバイオレンス・コンビでしたが、今回は潔く藤波、木村と握手。両チームに大歓声が送られます。そしてマードックが珍しくマイクを取り、もう1回、リングアウトなしでやろう!!とアピールします。次はMSGでのタイトル戦!?そんな夢も過るタイトルマッチでした。
6月7日 長野県・松本市体育館 (第24戦) その1
宮城から信越、長野へ。IWGPトーナメントはついに決勝です!!
トーナメント決勝戦
アンドレ・ザ・ジャイアントvs藤波辰巳
○アンドレ(6分17秒 体固め)藤波
さあ決勝。試合は藤波が自らを鼓舞していき好調ぶりをアピール。肩のケガも心配されることなく、開始から早々アンドレのショルダースルーをローリング・クラッチ・ホールドで返し度肝を抜きます。
アンドレにまさかの回転エビ固め!!
そして藤波はアンドレの足を狙いローキック。そしてなんと足の甲へ蹴りを入れアンドレを倒します。細かいテクニックが冴えます。アンドレのパワーに対しテクニックで勝負する藤波に期待が高まります。
しかし動きがいいアンドレはテンポよく藤波の動きについていきながらアームロック、18文キックと組んでも離れても快調に攻めます。
アンドレの人間エグドセミサイルがヒット!!なんという足の大きさだ!!
しかし18文キックの連発は不覚。藤波は2発目を交わすと1回戦のアイアン・マイク・シャープ戦でも見せたカウンターのボディアタックで、アンドレを撃沈させます!!

アンドレが崩れた!!
藤波の渾身の一撃。カウント・スリーか!!というところ、なんとかギリギリで返すアンドレ。あわやのピンフォールに場内は騒然にして大興奮です!!
しかししかし藤波もまた同じ技の不覚・・・アンドレのショルダースルーへ2発目のローリング・クラッチ・ホールドを決行。だが今度は完全に読まれヒッププレスで即迎撃されてしまいます。

完全に決まってしまったアンドレの人間圧殺
押し潰されフォール負けとなってしまいました。これにより藤波辰巳を破ったアンドレ・ザ・ジャイアントがトーナメントを制し優勝となりました。

パワーだけでなく、スピードとテクニックを発揮しての完全勝利だった
よってアンドレがアントニオ猪木とIWGP優勝戦へ。トーナメント2位となった藤波はWWFヘビー級選手権への挑戦権を得、ハルク・ホーガンと対戦することになります。
さあ、いよいよパート4です。