Quantcast
Channel: 団塊Jrのプロレスファン列伝
Viewing all articles
Browse latest Browse all 312

1976年6月26日 格闘技オリンピック(前編)

$
0
0

かつてプロレスには


“唐突にファンを襲う衝撃のニュース”


というのが出現し、ファンはそれを事実?デマ?と、翻弄されつつ、知りつつ、知らねど・・・そのニュースに気を張って、その後の経過を追っていったものだった。


しかし、いつしかそんな衝撃を受けるニュースは、プロレスからなくなっていった。いや、それは衝撃を受けるという前提の出来事が、プロレス界からなくなってしまったから・・・だったのかもしれない。


しかし!!その衝撃が今年蘇り、多くのプロレスファンの心を震えさせた!!


長きに渡り、文字通り封印されていたこの試合が、この値段で、こんな形で世に出てくるとは!!


たった数分だけでも見たいと大金を叩いて買った四角いジャングル格闘技世界一や格闘技オリンピックのビデオ。小学生の頃、テレビ朝日で夕方やっていたニュースと情報番組、イブニング朝日の金曜日のプロレス・コーナーでのファンのリクエスト・コーナーで、あっという間に流れて終わった世紀の一戦の最終ラウンド。やがて大きくなっても憧れは消えず、水道橋の駅周辺で闇で売っていた怪しいコピーものやネットで流れていたDVDを見ては画質や再生アウトで涙をのんだ数々の思い出は消えることはありませんでした。それは自分の彼女なんて遠い夢の話だったあの頃、ひとり深夜の自動販売機に出向いていった性欲の終着駅。小銭がなく、仕方なくなけだしの1万円を自販機に入れ、だが出てきたビデオはパッケージととちがった、そしておつりは出てこないというエロビデオ自販機の悲しき等価交換方式にも似たたたずまいでした。 あらゆるシーンで、少しでもこの試合を見たいと、見ようとしてきた。でも、やっぱり全編を、画質のいいので見てみたい!!しかしアリ側に権利があるこの試合では、それは絶対無理な話。見たい、でも見れない・・・そんな夢を抱いてきた試合だったのであります。


それが現実となる日が来るとは・・・初恋は遠い日の花火、そんな言葉は結果論で、もしかすると夢と希望を継続させれば、叶う日が来るのかもしれません!!


って、なんだおい!?


さ、さて、そんな夢の試合だった世紀の一戦・猪木vsアリですが・・・実はこの日は世界中で格闘技が同時に行われ、格闘技オリンピックと呼ばれた日でもありました。同日同時開催の大会、一体どんなものがあったのでしょうか?さっそくご紹介しましょう。


まずはNWA。テキサスで行われた試合から行きます。



○テキサス州ヒューストン・コロシアム 


NWA世界ヘビー級選手権 60分3本勝負

王者テリー・ファンクvs挑戦者ロッキー・ジョンソン


当時のNWA王者だったテリーのこの日の防衛戦の相手は黒い弾丸ことロッキー・ジョンソン。ジョンソンは当時のNWAの会長であったフリッツ・フォン・エリックの秘蔵っ子で、この頃にはテキサス地区でタイトルホルダーになり人気、実力ともに頭角を現してきた新進気鋭の存在でした。しかもテリーとはこの時点で1勝1分けという戦績で、この日に集まった1万3000人のファンの期待も大きかったようです。


リバース・ボストン・クラブを狙うテリーに耐えるジョンソン


3本勝負となったこの試合は、1本目はジョンソンが異名どおり弾丸のごとくドロップキックの連打からヘッドバッドで12分37秒、先取フォール勝ち。ヒューストン・コロシアムを大いに盛り上げます。2本目はテリー得意のローリング・クレイドルが炸裂し14分23秒で勝利。3本目は速攻を決めたテリーがアトミック・ドロップから3分5秒でフォールを奪って2-1で快勝。防衛に成功しています。


3本目が終わると両雄動けず・・・まさに死力を尽くした戦いだった


元気いっぱいな時代のテリーに、これまたガンガンだったジョンソンの一戦は各地で同時開催している他の試合に負けるわけにはいかないぜ!!という気迫をヒシヒシと感じさせる白熱した名勝負となったようです。


続いてはAWA。こちらはイリノイ州シカゴのインターナショナル・アンフィシアターにて行われましたAWAの二大タイトルマッチです。


○イリノイ州シカゴ・インターナショナル・アンフィシアター


AWA世界タッグ選手権 60分1本勝負

王者ディック・ザ・ブルーザー クラッシャー・リソワスキーvs挑戦者ブラックジャック・ランザ ボビー・ダンカン


まずはタッグ。王者チームは説明もいりませんね。かつてBI砲を苦しめた生傷男とぶち壊し屋の、最強コンビです。挑むのはジャンボ鶴田のAWAサーキットでタイトルに挑戦したこともある黒い荒馬ランザと戦車の異名をとったダンカン。4人ともかなりのラフ・ファイターなのでご想像どおりの試合となりました。


理屈はいらない。殴る蹴る、チョークに目つぶし・・・ケンカマッチだ!!


激闘はダンカンのタックルをかわし場外へ自爆させたブルーザーが、さらにダメ押しとばかりに二―ドロップを投下し19分41秒で王者チームがリングアウト勝ちを収めています。


タイトルを誇示するブルーザー。この迫力!!


残念ながら全盛時代を見ることはできませんでしたが、ケンカが原因で7校もの大学を退学となった、ケンカの最中に警察官に阻止されたが、その警察相手に大暴れし結局制止に入った7、8人もの警察官をすべてブッ飛ばしてしまったなど、数々の武勇伝を持つブルーザー。リングを降りれば葉巻をくわえド迫力で迫り、リング上では手の付けられないほどの大暴れをしていた・・・こんなにプロレスの醍醐味が詰まったレスラーがいるだろうか?いいな~絶対いい!!

AWA世界ヘビー級選手権 60分1本勝負 

王者ニック・ボックウインクルvs挑戦者バーン・ガニア


続いてはシングル。半年前に虎の子AWA世界ヘビーを奪われたガニアが雪辱に燃える一戦となったこのタイトルマッチ。当時はダーティ王者として名高かったニックですが、ご存じのとおりプロレス界きってのテクニシャン。そこにマネージャーのボビー・ヒーナンが付き添えば、挑戦者にはこれ以上ないほどの手ごわいチャンピオンでした。のちのハルク・ホーガンもこのコンビには手を焼き、何度幻のAWA世界ヘビー級王者になってしまったことか・・・


ニックとヒーナンの名コンビ


しかしながら試合はガニアが主導権を握り、グランド、スタンドでも果敢に攻め王者を追い込みます。


ラフでも押していた帝王ガニア


やがてチャンスとみるや、必殺のスリーパー・ホールドを炸裂させます。ここでレフリーがスットプをかけ38分8秒、王座移動!!と思いきや・・・なんと東京で行われる猪木vsアリ戦の宇宙中継が始まる時間になってしまったため・・・そうこの日はテレビ中継はもちろんですが、全米、カナダなどを合わせて約191ヶ所でクローズドサーキットが行われていたため、そのクローズドサーキットのメインである猪木vsアリ戦に試合が被ってしまうわけにはいかないので、その上での中断という結末に至ってしまったのです。まぁ・・・長いプロレスの歴史上でも、これは珍事ですね。仮にもこの頃のAWAの、世界タイトル戦でですよ?これは異例ですよねぇ・・・猪木vsアリ戦の影響力を、またちがった意味で見せつけられたような気がしますね。


さて、続きましてはロス・マットです。



○カリフォルニア州ロサンゼルス・オリンピック・ オーデトリアム


30分1本勝負

ウィリエム・ルスカvsドン・ファーゴ


世が猪木vsアリ戦に大注目をしているこの日、わずか約半年前には自分がアリと同じポジションにいたウィリエム・ルスカがロス・マットに登場します。


“猪木と戦った男”


として、柔道着を身に着けて登場してきたルスカ。この試合、東京の猪木vsアリ戦を意識してか、当初は柔道とのミックスド・マッチのようでしたが、これに対戦相手のドン・ファーゴがクレーム。これが通ってプロレス・スタイルでの試合となりました。


柔道着ではなくロングタイツにリングシューズで試合を行った


試合の方はプロレス・スタイルになりましたが、序盤からルスカが優位に攻めていってファーゴいいところなし、といった感じだったそうです。しかし見てくださいよ、このルスカの体!!憧れちゃうなぁ・・・


打撃でも優位に攻める。レフリーはロスの名物レフリー、なつかしのレッド・シューズ・ドゥーガン


結局10分24秒、ロープに振ってのカウンターからのスリーパー・ホールドでルスカが勝利を収めました。ルスカはこれでロスに登場して12連勝目をあげ、猪木との再戦に準備万端、意欲万全だったようです。


最後にWWF、ニューヨークです。



○ニューヨーク州センチュリー・シェア・スタジアム


WWWF世界ヘビー級選手権 時間無制限1本勝負

王者ブルーノ・サンマルチノvs挑戦者スタン・ハンセン


わずか2ヶ月前にMSGで首を折られるという大怪我を負わされたサンマルチノとハンセンのこの試合は前例のないほどの遺恨マッチとなりました。


当時のサンマルチノの知名度はプロレスファンではない一般のニューヨーク市民でも知っているほど高かったので、当然ファンときたらそれこそ信者と呼べるほどサンマルチノ狂だったのです。このためサンマルチノの首を折り大怪我を負わせたハンセンは信者に本気で命を狙われるほどの立場になってしまい、街もおちおち出歩けないほどだったといいます。


そんな状況だったからハンセンへのファンの暴行、発砲を防ぐべく王者サンマルチノが先に入場してくるという異常な事態も見られました。そう、ハンセンが先にひとりでリングで待っていては銃弾の標的になってしまうからです。こんな状況だったから、ハンセンの入場時もサンマルチノ狂である十数人にあっというまに囲まれてしまったため、数人の警察官がガードしながらというものだったそうです。


いろんなシーンで“命がけ”というが、こういう状況こそ、その本質なのかもしれない


試合の方は雪辱に燃えるサンマルチノがほとんど一方的に攻め・・・


血だるまになり場外へ転落するハンセン


わずか8分ちょうどでハンセンが戦意喪失から試合放棄となり、復活のサンマルチノが2ヶ月前の借りを返す形となりました。しかし、試合以外のところでは、リングサイドで観戦していた老婦人が試合中にハンセンがラリアートを打つ態勢に入ったところを見てショックで倒れ、亡くなるという信じられない事件がおきていました。また試合後退場するハンセンを待ち伏せしていた十数人のグループもいたそうで・・・入場から退場まで、まさに命からがら、だったんですね・・・


猪木vsアリ戦の日に、こんな命をやり取りするような戦いが繰り広げられていたと思うと・・・この日はレスラーもボクサーもファンも、いや人類が地球全体が戦いの日、だったのかもしれませんね。 


さて、センチュリー・シェア・スタジアムではもう一試合、注目の対決が行われました。そう、アンドレ・ザ・ジャイアントとチャック・ウェプナーの一戦です。こちらは後編で特集いたします。



Viewing all articles
Browse latest Browse all 312

Trending Articles