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Channel: 団塊Jrのプロレスファン列伝
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プロレス研究所~前田日明の12種類のスープレックスに挑戦だ完全版パート3~

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では、パート3です!!


73年10月、ジャンボ鶴田が「4種類のスープレックス」を手土産にプロレス修行していたテキサスから凱旋。同月6日に日本デビューを飾ると、3日後の10月9日には蔵前国技館で馬場さんと組み、ザ・ファンクスの持つインターナショナル・タッグに挑戦するという大物ぶりを見せつけ周囲を驚かせました。


しかし驚いたのはそれだけではありませんでした。そう、それまで日本のファンがあまり目にすることがなかったフロント・スープレックスを、鶴田がアメリカの師であるドリーに豪快に決めたこと・・・このインパクトがとにかく大きかったんです。


初期の鶴田のフロント・スープレックスはレスリングのとはちょっとちがう鶴田独特の投げ方でしたが、とにかく見事でした。


で・・・これ以前というと、日本でのフロントからのスープレックス、もしかするとサンダー杉山など、使ったレスラーがいるのかもしれませんが、やっぱりハッキリ確認できるところでは鶴田のそれからではないでしょうかね?


つまり・・・


1973年10月、ジャンボ鶴田が「4種類のスープレックス」のひとつとして公開



初期のジャンボのフロント・スープレックスは国宝級、見事の一言!!


1978年11月、ローランド・ボックの欧州選手権でのものがテレビで流れる


プロレス研究所~前田日明の12種類のスープレックスに挑戦だ完全版パート2~


1981年6月、デビューから新日本での維新軍時代まで?谷津がワンダー・スープレックスとして使用する



谷津のワンダー・スープレックス


という感じではないかと思います。


で、ボックのあと、厳密には谷津が使ってたわけですが、谷津のは入る体勢こそ見事なんですが、持ち上げてから歩を取り方向転換して、インパクトの瞬間には自身の膝をつきながら相手を大きく叩きつけるようなスタイルなので・・・そうですねぇ~たとえるなら、ちょうどテッド・デビアスのやってたパワースラムの体勢が近いですかね?そんな感じに見受けられましたね。


とまあ、こんな感じで・・・ダントツな鶴田のスープレックスからボックの異様に目に映ったあのスープレックス、そしてヤツの大きく叩きつけるフロントからのスープレックスと、それぞれちがった特色で使われてきたわけですが、1983年4月、前田日明の凱旋帰国第一戦での試合で、ボクらの世代は本格的に、そしてのちの新日本、U系と続く“スープレックス”を目にることになります。


それではまず、レガさんのブログ腕ひしぎ逆ブログ ”より


父子獅子の交差点(1983)


でも紹介されています83年5月、第1回IWGP公式リーグ戦、高松での猪木vs前田戦から前田のフロント・スープレックス、見ていきましょう!!


まず組みですが、先に紹介した“差し”からではなく、こちらは“胴タックル”から入ります。




画像1


フリースタイルでタックルというと足へのそれですが、上半身で戦うグレコローマンでのタックルはこの胴タックルになります。画像のように右足を踏み込む、と同時に両腕を胴体に回します。




画像2


踏み込みと同時に体が密着し膝が入ります。




画像3


そしてそのまま沈みます。かなり沈んでいますね!!




画像4


左足を送りました。




画像5


さらに沈み投げます!!


前田の踏込み、沈みがすごい為、まるで猪木が座ってしまっているようにすら見えてしまいますが・・・


この後、どうなるでしょうか!?




画像6


見てください!!画像5のときと猪木と前田のタイツの位置が変わっていないですね。しっかりホールドし、見事に重心を跳ね上げています。そして、そのしっかりしたホールドを前田は投げの中で変化させます。


パート1のとき説明したように本来の投げ方のようにしっかり固めて投げると自身が体をひねった時、相手の体もついてきますので同じようにひねられながら投げられるような形になります。要は自分の胸と相手の胸が付いたままの状態、ということですね。なので通常は、このまま投げれば前田は左に反って猪木はこちらを向く、というふうに投がるわけです。しかし徐々にホールドを離していくことで自身は反りながらも、猪木の体は浮き上がった軌道のまま、まっすぐに落ちていくというわけですね。




画像7




画像8




画像9


いやぁ~いいですねぇ!!


たとえばゴッチがやったとしても・・・レスリング出身のレスラーではクセといいますか、そういったものが出てしまうのでこの投げ方を覚えるのは容易ではないと思います。本当に前田ならではですね。ちょっと他のレスラーにはマネできないとボクは思いますねぇ・・・


で、これが前田のやるフロントからのスープレックスとして、最後にもうひとつ、ポール・オンドーフ戦で見せた前田のあのスロイダーを振り返ってみましょう!!


まず、組に行きます




画像1


こちらは胴タックルでなく、前回やったボックの組み方同様、差してから投げに行く組み方ですね。




画像2


クラッチしました。すでに前田の右足が深く、オンドーフの股に入っています。オンドーフは顔の位置が微妙・・・いやいや、体勢もなんだかおかしいです。組みに来られて、何かオドオドしているようにも見えます。前田はさらに相手に密着していくべく歩を詰めます。この後どうなるのでしょうか?


小鉄さんも見る目が変わりましたよ。




画像3


前田は前へ歩を詰め投げる体勢へ持っていきます。一方のオンドーフはズルズルと下がり、されるがまま・・・


小鉄さんの目は、ますます鋭くなってます。



画像4


前田は左足を送り重心を沈めます。もはや投げんばかりです。それにしてもオンドーフ・・・受けるにしても体の軸が斜めになっていますね。ちょっと同じ画像に軸を表して見ましょう。




画像5


こんな感じですね。パート2のボックのときと比べてみましょう。




画像6


いかがでしょうか?これで見ると、ボックのは左に反って投げれば軸は縦方向気味へ弧を描いて投げれることになりますね。つまり猪木の足は画面から見て縦に、この軸の線を切るようにくることになります。


しかし前田のこれはオンドーフの軸が斜めなので、ボックと同じように反って投げただけでは相手の体を回しきれない状態になって乗られてしまったり、あるいは相手が変なところから落ちてケガをしたり、自分もケガをしてしまう可能性が考えられます。どうするのでしょうか・・・




画像7


沈みました!!オンドーフの軸は、さらに傾いています。どうなるのでしょうか!?




画像8


投げましたぁ!!見てください!!前田は反っていますが、同時に体の中心を軸に、反りながらひねりを加え素早く回しています!!このため弧を描きながら、なおかつオンドーフの足が反時計回りに移動していきますよ!!




画像9




画像10




画像11


これです!!すばらしい!!


パート2のボックのと比べてみましょう。



画像1



画像2



画像3



画像4


すごいッ!!


先にもお話したとおり、この頃はまだフロントからのスープレックスがそこまで普及していた時代ではありません。なので最初は前田に組まれたオンドーフが受け方を知らなかったから、組まれたときにどうしていいかわからなかったので・・・あんな無防備な体勢になってしまったのかな?と思っていましたが、まあそれもひとつあるとは思いますが、やっぱりこの投げ方自体ですね。


この投げ方を見ると、相手がこの体勢になったからとっさの思いつきでこうした、とか、動きの中で偶発的に自然になった、というのはボクの知っている限りでは、まずありえないと思います。これは、こういうふうに投げる練習をしていないとできない投げ方だと言っていいと思いますねぇ・・・


前田は意図的に、この投げ方でのスロイダーを狙っていたんだと思います。アメリカン・スタイルの代表格でありトップクラスであったオンドーフを相手にゴッチ仕込みのスタイルで格のちがいを見せつけた、いや見せつけるためにあえて放った一撃だったのだと・・・そんな気がします。この試合で解説の桜井さんがスロイダーはドイツ語で「放り投げる」の意味と言っていますが、まさに言葉のとおりの技でありましたね。


さて、3回に渡りお送りしてきました前田日明の12種類のスープレックスに挑戦だ完全版、いかがでしたでしょうか?


小さい頃に憧れたプロレスは新日本プロレスのストロングスタイルでした。しかし関節技なんて理解できなかったし、受け身がどれほど重要なのかもわかりませんでした。でもプッシュアップとスクワットとブリッジは理解ができました。レスラーはみんなやってるんだ!!やると強くなるんだ!!強くなるためにするんだ!!と、将来レスラーを夢見た全国のちびっこファンは、憧れを抱いてプッシュアップをスクワットをマネし、そしてプロレス・スーパースター列伝で読んだ言葉


“強くなりたかったら首を鍛えろ”


を頑なに実行し、見よう見まねで首を鍛えたものでした。大きくなったらレスラーになってスープレックスを使うんだと・・・そんな思いを持ち続けていました。


バックに回った!!組みに行った!!その体勢に入るのを見ただけで、おお!!っと思わず身を乗り出してしまような、そして、ああやばい!!と手に汗を握ってしまうような・・・技を受ける方だけじゃない、見る方にもダメージを与えてしまう・・・そんな威力がスープレックスにはあるとボクは思っています。


近年はフロント・スープレックスやダブルアーム・スープレックスどころか、ジャーマン・スープレックス・ホールドやドラゴン・スープレックス・ホールドですらフィニッシュにならない時代になってしまいました。時代・・・そう言われてしまうと、もはや何も言えないかもしれません。しかし、祭り上げられた必殺技がいつまでも彩られるとは思いません。いつか戻ってくる・・・ボクはそう信じています。



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