久しぶりだな諸君。虎の穴・茨城支部のミスターXだ。
ふっふっふ・・・愚か者とはまさにこのことだが・・・ちょうどいい。そういうことならこの私が更新してやろうではないか。

おもしろい・・・この私を差し置いてタイガーマスクをやろうとはな!!

当時は子供向けにこんな絵本もあったんだぞ
プロレスラーを要請する組織、虎の穴で鍛えられたレスラーは皆、仕込まれた反則技の限りを尽くし相手を瀕死に追い込む悪党レスラーだった。こうするのは、虎の穴出身のレスラーを介し虎の穴という組織の恐怖を世に知らしめるため、そして虎の穴出身のレスラーは、そのファイトマネーの半分を虎の穴へ納めなければならないという掟があったのは諸君らも知っておろう。
先代の伊達直人は自分が生まれ育った孤児院のちびっこハウスの借金を払うため、恐怖に迫られながら本来虎の穴に収めるべく金を返済へ当てた。こうして虎の穴から裏切り者とみなされることになるのだ。そして子供たちへ正しい生き方を伝えるべく、試合で苦しくなっても反則技を使わない正統派として戦い続けることになる。こうして公私共に、虎の穴に追われながらの血みどろで過酷な長きに渡る戦いが繰り広げられるようになるわけだ。
原作では、そんな長い戦いの中で正当なテクニックへ開眼し、一方で反則のインサイドワーク、つまり反則5秒以内のルールを有効に使う技術も身につけたタイガーが、いよいよドリーファンク・ジュニアのNWA世界王座へ2連戦で挑戦することになり話は佳境に入る。
決戦前、ちびっこハウスに行きルリ子さんや子供たちの前で自分の正体を、とうとう明らかにすることを決めた直人・・・もう隠し通すのに限界を感じていたのだ。しかし、ルリ子さんや子供たちを目の前にして、直人はなぜかそれを言い出せなかった。そしてそれにただならぬ空気を悟り、去ってゆく直人を追いかけたルリ子さん・・・そんな中でタイガーの世界戦が始まる。
1戦目はドリーの巧妙なインサイドワークで逃げられ勝利しながらも反則を含む2対1のスコアで奪取を逃すが・・・
内容で押していたタイガーに2戦目の期待は高まった
だが2戦目。会場への移動中、渋滞を逃れるため車を降り裏の通りに入った直人。そこでトラックの前で転倒してしまった自転車に乗っていた少年を助けるため身を投げ出し、自らが死してしまうというラストを迎え終わった。
そう、死に際にマスクをドブ川へ捨てて、誰にも自分をタイガーと知らせぬまま・・・虎の穴の呪縛から解放され、NWA世界タイトルを目前にしたときだった。そんな中、伊達直人の一生が一瞬で終わってしまったのだ。孤児として生まれ、幼き日に虎の穴へ行き、やがて裏切り者として血みどろの戦いをしながら、やっと虎の穴の呪縛から逃れ、栄光まであと一歩というところで・・・
このせつなさが・・・おまえらにはわかるかね?わかるかねー!!
一方、アニメ版では虎の穴最後の刺客にして最強、最悪の敵であるタイガー・ザ・グレートと戦い最後を迎える。試合では割れた机でメッタ刺しの攻撃をされ、そしてとうとうマスクへその攻撃が!!次の攻撃から逃げるためには自身はマスクを脱いで脱出しなければならなかったのだ。攻撃をかわさず、すなわち正体を隠したままグレートにマスクごと串刺しにされ、その生涯を閉じるか?それともマスクを捨て身をかわし、すべての人の前で正体を露わにして命をとるか・・・
そして・・・それは一瞬だった。
「おれのタイガーが、伊達のキザにいちゃんだったなんて・・・」
涙を流しながら笑う伊達直人・・・ヤツが選んだ道はもうお察しだろう。これまで隠してきた正体を露わにし、ちびっこハウスの子供たちの前で金持ちでお人よしを演じてきた伊達直人を捨て、子供たちへ正しい生き方を知って欲しいため反則を使わず、正統派のプロレスを行ってきたことを捨てなければなかったのだ。そう正体を暴かれ、すべてが終わってしまったのだよ。
だが、最後にやり残したことがあった。それは正体が虎の穴の創設者にして大ボスのタイガー・ザ・グレートを倒し、虎の穴を壊滅、終わらせることだった。
「虎の穴からもらったものを叩き返してやる!それでおれは、伊達直人に帰るのだ!!」
群衆の前で素顔をさらし、直人は封印してきた虎の穴で仕込まれた反則攻撃のすべてを出し、グレートを葬ったのだ。虎の穴との戦いはこうして終わった。だが、もう子供たちに救いの手を伸べることはできない、ルリ子さんにももう会えない。直人はある意味、自らが死することよりもつらいことを選んだのだ。これがどれほどのことなのか・・・
この悲しみが・・・おまえらにはわかるかね?わかるかねー!

ジョーは文字通り鬼コーチであったが・・・しかし厳しい一方、直人と大門には優しく接してくれることもあった。ジョーは少ない食事を奪い合い喧嘩するふたりに、特訓と偽り別室へ通し、こっそり食事を食べさせてくれることもあった。
外国人ながら日本人以上に日本人の心、義理人情を持っていた、そんなジョーだったから・・・虎の穴から認められた者しかもらえない「タイガー」の名をもらった、自分がかわいがっていた直人が虎の穴を裏切ったことを許せなかったのだ。
来日の記者会見でさっそくタイガーマスク挑戦を打ち上げたストロング。覆面ワールドリーグで優勝し覆面チャンピオンとなったタイガーに
「貴様ごときにチャンピオンを名乗られては覆面レスラーの恥だ!!面汚しだ!!」(声:森山周一郎)
とまで言い放ち、覆面チャンピオンのタイトルへ挑戦をぶち上げた。だが、もちろんこれは表向き・・・実際は虎の穴から直人抹殺の命を受けてのことだった。
そんなジョーだったが、その後すぐ大門の前に姿を現した。かつては大門もタイガー抹殺の命を受けタイガーと戦ったが惨敗。掟により処刑を余儀なくされるが、なんとか虎の穴から脱出。裏切り者の第二者となり追われる身となったが、現在は港の荷役などをしながらひっそり身を隠していた大門だった。
虎の穴で直人と同期だった大門
それを知っているにもかかわらず、ジョーは自分の弟のように思っていた大門に、裏切り者の感情はまったくなく実に穏やかに嬉しそうに接した。だが、大門の気持ちは複雑だった。なぜおれとおなじように弟のように思っていたタイガーに挑戦を!?と・・・
「おれは裏切り者は許せない」
怒るジョー。しかし
「タイガーは孤児たちのために命を懸けて戦っているんだぜ」
直人が孤児たちのために虎の穴を裏切り戦っていることを大門から聞き、ジョーは驚いた。
「ファイトマネーを残らず施設の孤児たちのために送っているタイガーと、虎の穴のケチなご褒美にヨダレを垂らしている貴様とは・・・まったく月とすっぽんもいいとこだぜ」
このときジョーの中で何かが変わった。そしてさっきまで感情的だったジョーは一転し、復讐や抹殺のためでなく、直人や大門の先輩として恥ずかしくない試合を見せてやる!!そう大門に誓うのだった。
そしていよいよ決戦のゴングが鳴る。
試合はストロング優勢で幕を開け、タイガー劣勢のまま続いた。さすが虎の穴でコーチをやるほどの男・・・タイガーはまったく手が出ない。やがてアルゼンチン・バックブリーカーの状態からエアプレーン・スピン、そしてそのまま必殺ストロング・スイングへ!!
完全なストロング・スイングの態勢に入り、もう逃げられない。一回転、二回転・・・このままコーナー、鉄柱へぶつけられたらいくらタイガーといえど御陀仏だ。もはやこれまで・・・しかしそのときストロングの脳裏に大門の幻影が過った。
「ジョー、汚い反則技を使って孤児たちのために命を懸けて戦っているタイガーを殺せるか?」
ジョーの手が離された。タイガーは鉄柱ではなくマットへ放り投げられた!!
この後、技と技の攻防が続き、そして・・・コーナーを利したタイガーのバックドロップが炸裂。ストロングはリングアウトで敗れた。
会場で自らマスクを脱ぐストロング。何も知らなかったタイガーは驚いた。
「キミはコーチの鉄腕ジョーじゃないか!!」
リング上のタイガーに一瞬目をやる。その心中は・・・
何も話さず逃げるようにリングを後にするジョー。人として何かを守った・・・だが、その代償はあまりにも大きかった。
会場で観戦するミスターX。すれ違いざま、ミスターXの言葉が、虎の穴の掟が、ジョーに重くのしかかった。
「裏切り者め。かくなるうえは掟通り殺すまでのことだ」
その頃、控室で試合を思い起こすタイガー。
「虎の穴の鬼コーチと呼ばれた鉄腕ジョーが、おれに負けるはずはない!!それになぜ鉄柱にたたきつけなかったのだ!?何かある・・・それに逃げるように出て行ったミスターX!!」
タイガーの予感は的中した。まだジョーがいない控室。ジョーの荷物の前にはミスターXが・・・
それは一体!?
「真夜中の海の上、飛行機事故でストロングアームも一貫の終わりってわけだ」
「時限爆弾とは古い手だが、それだけ確実だ」
翌日、空港でジョーを見つけ出した直人。しかしジョーはあまり話をしようとしない。
もはや虎の穴にねらわれているのを知らないわけではないだろう?と言い寄る直人。そして、聞かせてくれ、反則技をなぜ使わなかったのか?と・・・
ジョーは使う機会がなかったからと言い、話そうとしない。だが、記者会見で挑戦してきたときとリング上のストロングは別人だった!!なぜだ!?とさらに迫る直人に
「みなしごさ、おれも・・・」
自分の生い立ちと、そしてコーチらしく、最後に直人に必殺技を持つことを説き
「おまえと大門の無事を祈ってるぞ!!」
と去って行ったジョー。
搭乗し飛び立ったのち、直人がジョーのアドバイス、必殺技のことを考えている頃、時計は12時を指した。
北極回りスイス行の飛行機が飛び立ち、ちょうど太平洋の上を飛んでいる時間だ。そう、ミスターXが仕掛けた時限爆弾のセットした時間に・・・
いかがだったかね?
タイガーマスクの物語を通して、実にたくさんの虎の穴のレスラーが登場した。虎の穴の命を受け、タイガーを抹殺しようと戦いを挑んできたレスラー達がいた。それにレスラーでない工作員もたくさんいた。しかしほとんどが、虎の穴の圧力、つまり力による制圧の下での命を受けてのものだったのだ。そう、タイガー抹殺に失敗したら死刑というな・・・
その恐怖から逃れるため、ヤツらは死にもの狂いの様相で命令を実行した。だがそのほとんどは失敗し、処刑されていった。
ジョーのような、それこそ虎の穴でコーチまでした人間こそ、裏切ったらどうなるのかは一番よく知っている。しかし、たとえ虎の穴に処刑されることになっても、人としての心を貫いた、義理人情のあるレスラーは漫画、アニメを通してジョー以外、誰一人としていなかった。
ジョーが太平洋を渡る頃、時限爆弾が作動して飛行機は墜落事故を起こした。だが、はたして本当にそうだったのだろうか?
ここからは私の個人的な見解だが、自分の荷物に見慣れない物が入っていて、気づかない人間がいるのだろうか?私は実は、ジョーは時限爆弾のことを知っていたのではないか?と思うのだ。爆弾に気づき、そして巻き沿いを出さないため、もしかしたら飛行機に乗るフリをして乗らなかったのではないだろうか?と・・・そう思うのだ。
直人の、おれと大門と3人で子供たちのために戦おう!という呼びかけにも答えなかったのも、大門と直人への気持ちの他、自分が過ごした虎の穴への恩を感じていたからではなかったのだろうか?ジョーは直人と大門の戦う姿勢へ気持ちを表したが、だからといって虎の穴に反旗を翻した、裏切ったわけではなかったのではないだろうか?だから自分でケジメをつけたのでは・・・私にはそう思えてならないのだ。義理堅いジョーなら、私はあり得ると思うな・・・
さあ、次回はタイガーマスク二世だぞ。ふっふっふ・・・覚悟しておけ。